ろくでなし子がネット炎上を語る「名前や活動が知れ渡るので美味しい」

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白熱したろくでなし子さんの刊行記念イベント(右がろくでなし子さん)
白熱したろくでなし子さんの刊行記念イベント(右がろくでなし子さん)

 2015年7月12日、東京は下北沢の書店「B&B」にて、ろくでなし子さんと市原えつこさん、二人の女性アーティストによる対談講演会が行われました。

ろくでなし子×市原えつこ 「怒り過ぎの世知辛い世の中でも楽しく自由に表現するには。」 『私の体がワイセツ?!』(筑摩書房)刊行記念|本屋B&B

 今回の講演会はろくでなし子さんの単著、『私の体がワイセツ?!』刊行記念イベントです。2014年、「まん中」(※女性器のこと)の3Dプリンター用データを頒布したことで『わいせつ電磁的記録記録媒体頒布罪』に問われ逮捕されたろくでなし子さんが、逮捕からのいきさつやこれまでの半生を振り返り、自作の「まん中」アートを時系列順に紹介した一冊です。

 なお、ろくでなし子さんは今も係争中。「まん中」を模したオナホールが特に何の問題もなく発売されている世の中で、3Dプリンター用データを頒布したら有罪というのも何だかよく分からないので筆者としても頑張って勝訴して欲しいところです。そもそも3Dプリンターから出てきた「まん中」模型で性欲が刺激されたり、興奮したりするんでしょうか? 僕にはよく分かりません。

作:ろくでなし子。「まん中」模型はこんな感じでアート利用されたりします。う~ん、興奮はしないな~~。

 ろくでなし子さんの対談相手の市原えつこさんは、大根に電極を突き刺して喘がせる「セクハラ・インターフェイス」などで知られるアーティスト。

 彼女は最近、感情認識パーソナルロボット「Pepper」に乳首を搭載したことで炎上してしまいました。

乳首搭載ロボ「ペッパイちゃん」はなぜ炎上したのか 作者が明かす制作の背景|ウートピ

 イベントでは炎上初心者の市原えつこさんが、炎上どころか逮捕までされた炎上達人のろくでなし子さんに、炎上にまつわる様々な質問を行いました。筆者もちょこちょことミニ炎上している身ですから、大変興味深い質問コーナーとなりました。

「炎上は誰にでも起こるもの。何が、いつ、誰の気に障るか分からない……ということを前提に、ろくでなし子さんに炎上について聞いてみたいと思います」との市原さんの言葉を皮切りに、質問はスタートします。

炎上は実際困るの?

市原「炎上中、実際に困ったことってありましたか?」
ろくでなし子「全くないですね、むしろ名前や活動が知れ渡るので美味しいことしかないです」
市原「私も炎上中、ネットでは色々書かれてるけど、現実で困ることって全然なくって。仕事場の先輩もけっこう炎上したこと知ってたんですけど、『あれってなんで炎上してるの?』くらいの感じで……」
ろくでなし子「そうそう、ネットを開けば非難轟々でも、現実で困ることってないよね」
市原「だから、見なけりゃいいんだ、ってなりましたね」

 ネット上の炎上は、テレビ局のカメラマンが自宅に張り付いたりする程ではないので、現実的な被害は実はあんまりないんですよね。なので、見なければ済むことは結構あります。……まあ、場合によっては住所を探られたり、会社に凸されたり、現実にも及ぶことはありますが。

「嫌い」と感じる熱量

市原「炎上のメリットってありますか?」
ろくでなし子「物議を醸すことにより、悪口とかでも、それをきっかけにググって調べる人とか増えますね。この人はこんなことやってるんだ、って勝手に調べてくれるので。初めから『バーカ』って思ってる人もいるけど、『へー』って感じで興味を示してくれる人もいる」
市原「好きの反対は無関心ですからね」
ろくでなし子「そう、『嫌い』って言う人は実はすごく感情に突き刺さってると思うんですよね。『ろくでなし子きらい』とかわざわざツイートするだけでも、何かがその人の中にあるからこそ言いたくなるのであって……」
市原「その人の中に、何らかの熱量は生まれてるってことですよね」

 これはかなり前向きな意見ですが一理あると思います。僕も、「***だから嫌い」ではなく、特に理由も書かれず、いきなり「きらい」とツイッターなどで言われることがあります。なんでそんなこと言われてるのかよく分からないけど、少なくとも相手から何らかの反応を引き出すことには成功しているわけで、ゼロではないんですね。……でも、本当に困っちゃうのが、次に出てくる、よく分かんない事実を勝手に作り上げて、勝手に怒り出す人たち。

ウソを拡散する人には無視しかない

市原「インターネットでの誹謗中傷に対しては、どう対応するのが良いのでしょうか」
ろくでなし子「私も最初はいちいち反応してたんですよね。主にツイッターなんですけど。三ヶ月くらいやってたんですけど、文句を言う人にまじめに答えても、本気で私の事嫌いな人には何を言ってもウソを言い続けて、全然受け入れないので徒労感しかなくて。分かったのは『何を言ってもダメ』ということ。なので、無視をするのが一番ですね。ウソを拡散されるのは、それはすごく嫌なんですが、私の場合は裁判だとか作品を作るとかで公式に表明して行けば、いつかそれが事実になるんじゃないかって思ってて。賢明なのはやっぱり無視ですね」

 僕の経験上だと、丁寧な説明も全く無駄というわけではないとも思うんですが、「それはあなたの勘違いですよ。実際は~」で受け入れない人は確かにいます。あと、炎上が祭りムードになってくると、とにかく叩くのが優先で真実などはどうでもいい、むしろウソを作り上げても叩こう、という人たちも出てきます。こうなってくると何を言っても本当に流れは止まらないですね……。

自分の作品趣旨が勘違いされた時

市原「作者は自分の作品についてどこまで説明するべきでしょうか? そういう作品じゃないんですよって、私も説明しながら、でも、自分で作品を規定するのがいいことなのかなって疑問もあるんです」
ろくでなし子「私も三ヶ月位ずっと説明を続けてたんですけど……。結局、作品なので、作品作りが全ての説明になるんじゃないかな、説明はいらないんじゃないかなって今は思ってます。……まあ作品を説明してる本とか出しちゃいましたけど!」
市原「ある意味、作品が誤読されたり、受け入れられなかったり、そういうのも含めて、この世界の姿を炙り出しているっていうか」
ろくでなし子「作品をどう解釈するかはその人達の自由なので、こちらが意図していなくても、その人がそう思う自由もあるじゃないですか。だからそれを『違います!』って言い張り続けるのも、その人の表現の自由をねじ伏せることにもなっちゃうし。……何より説明してもしなくてもどちらにしろ嫌われます!」

「エ~~、なんでそんなよく分かんない反応すんの!? アホなの? バカなの??」と思うことはしばしばあります。かつて僕が『作ってあげたいコンドームごはん』という作品を発表した時は、一部の人たちは「架神恭介は本当は韓国人で日本文化を貶めるために日本人のフリをしてこんな作品を作ったのだ」とか言ってました。こういうこと言われたら流石に否定したくなるけど、まあ言っても聞かないんだろうな。

アートは炎上するもの

市原「炎上とアートの関係性についてはどう思いますか?」
ろくでなし子「物議を醸すのがアートだと思うんですよね。だから、これはおかしいとか、こんなのアートじゃない、って言われる物のほうがアートだと思うんです。世の中の価値とか常識とかに本当に問いかけるものなら絶対炎上すると思うし、私は非常に必要だと思います、炎上とか」
市原「既存の価値観を拡張するようなことをすると批判は起こって当たり前なので、恐れずにやるべし、ということですね」

 やや極論にも感じますが、理屈で言えばその通りな気がします。既存の価値観を拡張するのがアートだと思うし、拡張すれば反発があるのも当然で、アーティストとは炎上してナンボなのかもしれませんね。

***

 以上、炎上達人のろくでなし子さんと、炎上初心者の市原えつこさんによる炎上対談でした。「炎上は誰にでも起こるもの」という市原さんの言葉を受け止めて、皆さんも以上の知見を御自身の炎上時に役立てて下さい! 他人事じゃないぞ、ちょっと変わったことしたら本当にすぐ炎上するぞ!!

 なお、ろくでなし子さんは30分5000円でのレンタルサービスを行っており、筆者も以前より、ろくでなし子さんの「まん中」啓蒙活動について思うところがあったので、次回はこのサービスを利用して、ろくでなし子さんに直接その辺りを聞いてみたいと思います。

ろくでなし子レンタル

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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