11月10日、15年目となる「プロ野球12球団合同トライアウト」が、静岡草薙球場で行われた。チャンスをつかめるのは、わずか数名。たとえ契約にまでこぎつけても、再び第一線で活躍できる選手になると、12球団で1人出ればいいほう。いわば“超狭き門”なのだ。
「あそこで合格する選手はどうせ、最初から話はついてるんでしょ?」 そんな声も聞こえてくるなど、昨今は制度そのものの形骸化も指摘されているのが実情でもある。しかしそれでも、当日は独立リーグなどに所属する元選手を含む、投手33名、野手14名の計47名が、一縷(いちる)の可能性を信じて、同地に参集。トライアウトを「宝の山」と評した中日・落合博満GMをはじめとした多くの球界関係者が見守るなか、シート打撃方式の実戦テストに挑戦した。
「思い出作りのような格好悪いことはしたくない」 同じ“戦力外”の立場でも、そう言ってトライアウトを回避する者も少なくない。当然、読者の中にも同様の冷めた見方をしている方もいるだろう。 だが、金銭的な思惑が絡むFAと違って、そこに集いし選手たちが皆、一様に持つのは「一日でも長く野球がしたい」という、純然たる想い。悲壮感さえ漂わせる、その一途さこそがトライアウトの醍醐味であり、ロマンなのである。そんなドラマを目にするべく、本誌は現地取材を敢行。崖っぷちの男たちを追った。
「いろんなチームで若返りが報じられているのを見聞きしちゃうと、“やっぱり俺も辞めたほうがいいのかな”って気持ちがよぎることもありました。でも、自分は収入も実績も十分なスター選手とは違う。だから思い直したんです。自分みたいに最後まであがく選手が、一人ぐらいいてもいいんじゃないのかなって」 阪神を戦力外になった加藤康介がこう口にしたように、今季の球界では、例年にない“引退ラッシュ”が巻き起こった。受験した選手最年長37歳の加藤は、若手主体の参加者の中でも、とりわけ異彩を放っていた。
「もちろん今回は、同じ戦力外でも“どこかが絶対に拾ってくれるだろう”という自信もあった5年前とは気持ちのうえでも、まったく違う。でも、自分がここまで来られたのは周囲の支えがあったから。だからこそ、これが最後になってもいいから、本当に居場所がなくなるまでは続けようと思ったんですね。
トライアウトの裏側…プロ野球「戦力外通告を受けた男たち」密着ドキュメント
2015.12.29 20:00
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