国会議員の“育休”に異論続出…それでも向き合うべき論点がある

安倍総理による「決断」はあるのか?

 2015年の終わり、宮崎謙介自民党衆議院議員(34)の「育児休暇宣言」が話題になった。国会議員による育児休暇は、今のところ認められていない。

 そもそも議員とは時間に制約されず政治のために働くものだという趣旨だからだ。都道府県知事、市長ら地方自治体の首長、地方議会の議員も同様だ。例外として東京都町田市、埼玉県狭山市などいくつかが規則で育児のほか、家族の看護・介護を理由とした“欠席”を認めているに過ぎない。

 もっとも宮崎議員が申し出た「休暇」と「欠席」ではその意味合いは大きく異なる。かつて議会事務局を担当したある地方自治体の職員はその違いをこう解説する。

「細論や多少の異論はさておき、休暇とは“休んでいる間も給与が出て、職場もそれを労働者の権利”として認めているもの。権利なので堂々と休んでいい。他方、欠席とは“自らの都合でやむを得ず職場に出てこない”もの。労働者による自己都合なので給与が支払われなくても文句は言えないのです」

 実のところ、現在、国会議員には“産休”制度すら存在していない。2000年の橋本聖子自民党参議院議員の出産を受けて、国会議員の産休制度について議論されたが、結果、認められたのは「出産による本会議欠席」を認める規則改正だ。“産休(休暇)”制度が確立した訳ではない。欠席という趣旨からか、橋本議員は出産後、1週間で公務に復帰した。いわゆる“産休”というには程遠い現実がある。ましてや育児や看護・介護を目的とした“休暇”取得となれば、そのハードルはさらに高くなる。

“育休”を制度化しなければならないのか?

 とはいえ、そもそも議員に休暇が必要なのかという声も根強い。議員活動はフレックスであり、わざわざ“休暇”と宣言しなくても時間をやり繰りして育児なり看護・介護にあたればいいというのがその理由だ。関東某県の地方議員のひとりはこう語る。

「何もかも制度化することが必ずしもよいかといえばそうともいえない。出産時の産休の制度化は必要だったかもしれないが、育児や看護・介護ならば、現行の制度を使って当事者が時間をやり繰りする姿を有権者にみていただくことがいいのではないか。それを有権者がどう判断するかに尽きます」

 議員の育児、看護・介護による休暇制度確立に反対とするこの議員は、今回の宮崎議員による育児休暇取得宣言に纏わる声についてこう付け加えた。

「サラリーマンの方でも、職場の人に、『ちょっと外回りのついでに保育所に行ってきます』といった場合、これを杓子定規に時間休暇だ云々と何でも規則に当てはめる社会になりかねない。社会全体が育児や看護・介護という“個人の都合”に寛容になれば済む話だ」

 だがこうした声にも異論は多い。国会議員など公の職に就く者が率先して産休、育児、看護・介護といった“個人の都合”で休暇を取る制度を確立しなければ民間企業ではこの手の休暇制度は浸透しないというのがその理由だ。前出の職員はこう語る。

「かつての小泉政権時代、『クールビズ』が社会で浸透しましたね。この手の話は政治家による率先と制度化がなされなければ、到底、社会で根付くことはありません。クールビズも民間企業によるものであれば今ほど浸透しなかったでしょう?」

 賛否両論、議論が分かれる国会議員の産休状況、海外では議員による育児休暇を取ったり、デンマークにみられるように議員活動ができない間、上位落選者が「代理議員」として活動する例もあるという。

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