田中角栄 日本が酔いしれた親分力(24)田中が遺した数々の人生訓

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田中角栄 日本が酔いしれた親分力(24)田中が遺した数々の人生訓

 その夜11時過ぎ、渋谷区松濤にある田村の自宅の電話が鳴った。妻は、すでに就寝し、起きる気配はない。田村は、仕方なく電話に出た。

「はい、田村ですが」

 受話器の向こうから、威勢のいい声が響いた。

「おお、ゲンさん、俺だよ、俺だよ」

 田村は、首をひねった。

〈誰だ、こいつは〉

 田村は訊いた。

「あんた、誰」

「田中だよ、角栄だよ」

「エッ! 角さんですか。これは昼間に大変失礼なことをして、申し訳ありませんでした」

「いや、いや、そんなことはいいんだ。今ね、1人で飲んでいるんだ。もう婆さんも誰も、相手になってくれないんだよ。1人じゃ淋しいから、君、今から飲みに来いよ。話し相手になってくれないか」

 田村は、渋った。

「今からといっても、もう運転手も帰したし」

「タクシーで来ればいいじゃないか」

 そこまで言われ、さすがに断りにくくなった。

「わかりました。すぐに行きますよ」

 田村は、表でタクシーを拾い、目白の田中邸に出向いた。田中の書生に、母屋に案内された。

 田中は、丸干し鰯をかじりながらオールドパーの水割りを飲んでいた。

「いや、よく来てくれた。ゲンさんは何にする?」

「僕は日本酒をもらおうかな。冷やでいいから」

 ほどなく、書生が日本酒の一升瓶とコップを持ってきた。田中がコップに日本酒を注いでくれた。

 田村は、田中に詫びた。

「今日は、どうも失礼なことを言ってしまってすみません」

「俺こそ、君に無礼なことをして申し訳なかった」

「僕も無礼なことをしてしまったので、お互い様ですよ」

「そうか、許してくれるか」

「もちろんですよ」

 田村は、30人規模の派閥横断の田村グループを形成していた。田中派には、20人ほどおり、小宮山重四郎と内海英男が代貸しとして束ねていた。仮に田村が田中派を脱藩すれば、彼らも行動を共にするだろう。田中派にとっては、大変な打撃になる。が、田村は脱藩する気持ちはなかった。

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