昨年3月、麻原彰晃の三女として実名による自伝を出版し、世間を驚かせた「アーチャリー」。それから1年半余りを経て、彼女は再び秘密裏に行われた「講演会」の場に姿を見せた。そこで語られたのは、オウム裁判への不満、拘置所の「父」の姿だった──。
「被害者の方々が大勢おられるので、私が事件に触れてお話しするのはどうかと思いますが‥‥」
こう言って、とつとつと語り始めたのは、オウム真理教(現・アレフ)麻原彰晃死刑囚(61)の三女で、ホーリーネーム「アーチャリー」こと松本麗華氏(33)である。昨年、初めて実名を明かしてつづった著書「止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記」(講談社)を刊行し、話題となったのは記憶に新しい。
10月5日、村上正邦元参院議員が主催する、企業の幹部らを招いた限定的な勉強会にゲストとして登場。長年オウム問題を取材し、アーチャリーと交流がある映像ジャーナリスト・森達也氏が同席した。いわば“秘”講演会の席で、アーチャリーは次のように続ける。
「父と最後に話したのは、21年前の5月。私が12歳になったばかりの時でしたが、その時の父と逮捕後の父がどうしても関連性を持って認識できなくて、いまだに何が起こったのか、自分の体の中で飲み込めていない状態です。このような話をすると『被害者の方をどう思っているんだ』というお話をいただくんですけれど、それについては非常に難しい問題で‥‥」
麻原死刑囚がオウムの教団施設「第6サティアン」で逮捕されたのは、95年5月16日。まさにアーチャリーが12歳の時である。
逮捕された父親と事件後、東京拘置所で初めて面会したのは04年9月のことだったが、逮捕から9年の時を経て、麻原死刑囚の精神は崩壊していた。麻原死刑囚は呼びかけにまったく反応がなく、突然、自慰行為を始めるなどの奇行を見せる。
アーチャリーは、次のように回想した。
「複数の精神科医に鑑定をしていただいたんですけども、父は重度の『昏迷』状態にあり、心神喪失であると、皆さんは判断されました。昏迷な状態というのはよくわからないんですけれども、心身ともに、自己表現ができる内部刺激が感応しない状態というふうに言われています。