経営再建中の東芝が、8月24日に取締役会を開き、半導体子会社の東芝メモリを米国半導体大手のウエスタンデジタル(WD)を含む「新日米連合」に売却することで大筋合意したが、31日に開催された定例取締役会では、一転、結論が先送りとなった。
当初は産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が、それぞれ3000億円、東芝も1000億円、さらにゆうちょ銀行など日本企業が500億円を出資。ほかにも三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が融資として7000億円程度を負担。一方、WD社は、普通株に転換可能な社債を引き受ける形で1500億円を拠出する方向で、売却額計1兆9000億円でまとまりそうだった。
それが結局、土壇場になってWDの強硬姿勢などにより膠着。改めて交渉のやり直しとなったわけだが、いずれにせよ、場合によっては3兆円以上の価値があると言われた東芝のメモリは、安値の叩き売りという結果をもたらすだろう。その原因は、売り急いだからだ。
東芝は、6月21日に東芝メモリの売却先に関して、日米韓連合に優先交渉権を与えた。WD社を売却先に入れたくなかったからだろう。東芝とWD社は、東芝の四日市工場に共同で設備投資を行い、生産されたメモリを予め定めた割合で分け合う合弁事業を行っている。東芝とWD社は、それだけの関係だ。
ところが、WD社は東芝メモリの売却計画を知るや、売却にストップをかけ、もし売却するのであれば自社に安値で売れと言ってきたのだ。言い掛かりに近い申し入れだったため、東芝は当然応じなかった。ところが、WD社は東芝の半導体事業の売却を不服として、国際仲裁裁判所に訴えたのだ。
東芝は、それも無視して、日米韓連合に優先交渉権を与えたのだが、日米韓連合が国際仲裁裁判所の訴訟リスクを恐れ、交渉が暗礁に乗り上げてしまった。国際仲裁裁判所は、米国に有利な判決をしばしば下すからだ。そのため東芝は、WDを含む新日米連合に東芝メモリを売却せざるを得なくなったのだ。
私は、言い掛かりをつけてきたWD社が、最終的に1000億円以上の利益を出すのではないかとみている。米ファンドのKKRを含めれば、米国の儲けは、数千億円の規模に達するだろう。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 東芝半導体売却で誰が儲けた
2017.09.08 15:00
|
週刊実話
ピックアップ PR
ランキング
総合
社会
1
飲食店を支える「業務用中華点心」 人手不足時代の新たな市場価値を読み解く
TREND NEWS CASTER
2
地域産品は「物語」で価格競争を抜け出せるか、500件超の商談から見えた地方ECの課題
TREND NEWS CASTER
3
スマホ時代に見直される「眼鏡の選び方」、度数だけでは解消できない目の負担とは
TREND NEWS CASTER
4
人的資本開示、進んだはずが現場は「手作業」 上場企業の7割が直面する意外な壁
TREND NEWS CASTER
5
資材高と職人不足で揺れる住宅市場、地場工務店は生き残れるか
TREND NEWS CASTER
6
年間56万トンのアパレル廃棄と女性の副業ニーズをつなぐ、「Re:che」が挑む循環型ビジネスの持続性
TREND NEWS CASTER
7
猛暑でもファン付き作業服が使えない…「防爆エリア」の知られざる熱中症リスク
TREND NEWS CASTER
8
「西洋医学×漢方×手相」という異色アプローチ 標準治療では救いきれない患者と”科学的根拠”の境界線
TREND NEWS CASTER
9
「個人が変わっても組織が変わらない」のはなぜか? エグゼクティブ・コーチングの盲点を突く「社長+幹部一体型」の勝算
TREND NEWS CASTER
10
なぜビル清掃予算は「30〜55%」も消えるのか?多重下請け構造の限界 ――多重構造の無駄を省いた「科学的清掃」の勝算
TREND NEWS CASTER