ヒトの脳を持つサルをつかった研究はどこまで許されるのか?
2019.07.08 20:30
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カラパイア
AKKHARAT JARUSILAWONG/iStock
専門家が動物実験に使うハイブリッド動物の作成に警鐘を鳴らしている。かねてから人間と動物のキメラに内在する倫理的な問題が懸念されていたが、今回は、アルツハイマー病の研究にヒトとサルのキメラを作りだす研究分野から提起されたものだ。
実験台となった動物に明るい未来はない。そうした悲劇を防ぐためにもきちんとした倫理指針を設けるべきだというのだ。
・なかなか進まぬアルツハイマー病の研究
ヒト-サルキメラは、アルツハイマー病をはじめとする脳の病気の治療法開発を前進させるのではと期待されている。
痴呆症の原因となる進行性の変性疾患であるアルツハイマー病は、脳にβアミロイドというタンパク質が蓄積され、それが神経細胞を殺してしまうことが原因と考えられている。
大勢が苦しむこの病気の治療法を開発するために、これまで膨大な研究費が投じられてきたが有効な治療は見つかっておらず、西洋諸国では依然として主要な死因であり続けている。
・ヒトの脳を持つサルでの実験
目下、アルツハイマー病治療の研究はラットによる動物実験で進められているが、当然ヒトとネズミの脳には違いがあるため、このやり方には自ずと限界が生じる。
そこで先端の科学者たちは、もっとヒトに近いサルの脳を使って研究を行なっている。サルの脳に病気を引き起こすβアミロイドを注入し、そのときの脳の様子を観察するのだ。
しかし、この方法でも、サルの脳がどの程度アルツハイマー病の影響を受けているのかはっきりとしないままだ。
そこで、さらに一歩進め、ヒトとサルのキメラを作ろうというアイデアが提唱されている。海馬など、一部が完全にヒトに由来する脳を持つサルでならば、直接アルツハイマー病の研究が可能であるし、有望な治療法を試すこともできるだろう。