2001年に出版した小説『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館刊)が300万部以上のメガヒットを記録した作家・片山恭一氏。その最新エッセイのタイトルは、ベストセラーのタイトルをモチーフにした『世界の中心でAIをさけぶ』(新潮社刊)だ。
アメリカ・シアトルに飛び、「シンギュラリティ」をめぐる思索を深めた片山氏。AI(人工知能)は私たち人類の存在をどう変えるのか。お話をうかがった。
(聞き手・執筆/金井元貴)
■最初は困ったけれど、非常に示唆的なタイトルだと思った ――タイトルが印象的です。『世界の中心でAIをさけぶ』というのは、ご自身のベストセラー小説がモチーフですよね。片山:実はこの『世界の中心でAIをさけぶ』は担当編集者がつけたタイトルなのですが、最初は少し困ったんですよ。いつまでも片山恭一という名前が認知されていない一方で、「セカチュー」(世界の中心で、愛をさけぶ)が圧倒的な認知を得ている。僕の名前が出るときに「セカチュー」が引き合いに出されるのはしょうがない部分もあるのですが、いつまでも「セカチュー」というタグがつけられることにすっきりしない思いがあったんです。
ただ、本になって読み返してみると、タイトルはこれしかなかったという気がしています。ここで書いている結論は、『世界の中心で、愛をさけぶ』で描こうとしたことの発展形といいますか、あのときから18年書き続けてきたことが前進している手ごたえを得たんですね。
――前進している、というのは?片山:この本ではアメリカの主にシアトル周辺を旅しながら、見たり感じたりしたことを日記のような形でまとめていますが、旅の中には常にAIというテーマがありました。今、人間を含めた世界は大きく変わろうとしている。その中心にあるテクノロジーがAIなのだろうと。もはや僕たちの生活はAIなしにはありえない。だからAIを中心に据えようというのは旅をする上での重要なポリシーでした。
その結果、何があぶり出されたか。