この夏、岩手県の遠野で伝統芸能「しし踊り」を見学させて頂きました。
異形の面をかぶった「しし(鹿or獅子)」や刀を閃かせた子供たちの勇壮な舞いが強く印象に残るこの踊りは、かつて民俗学者の柳田国男(やなぎだ くにお)も、その代表作の一つ『遠野物語』にこう記しています。
勇壮なしし踊り。遠野駅前にて。
「……天神の山には祭りありて獅子踊りあり。ここにのみは軽く塵たち、紅き物いささかひらめきて一村の緑に映じたり。獅子踊りといふは鹿の舞いなり。鹿の角をつけたる面をかぶり童子五、六人剣を抜きてこれと共に舞うなり……」
※『遠野物語』序文より。
意訳すると「天神山のお祭りでは獅子踊りが演じられ、華やかな装束が山深い寒村を彩る。鹿の角をつけた面をかぶった者が抜刀した子供たちと一緒に舞い踊る……」と言ったところですが、初めて実物に接すると、その躍動感に血沸き肉躍る想いがしました。
そこで今回は、この「しし踊り」について紹介したいと思います。
しし踊りのルーツと種類しし踊りの起源については諸説ありますが、その多くは生きていくために狩らねばならなかった鹿たちの供養をきっかけとして、やがて鹿の繁殖力にあやかって子孫繁栄や豊年満作を祈願するようになり、獅子舞や田楽踊りのように年中行事や祭礼に組み込まれていったようです。