前回のあらすじ
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時は舒明天皇九637年、豪族・上毛野形名(かみつけぬの かたな)は、朝廷に順(まつろ)わぬ蝦夷の討伐に出ますが、返り討ちに遭ってしまいます。
そればかりか、逃げ帰った砦を完全包囲される絶体絶命の窮地に陥り、最早これまで……逃走を図る形名を諌めたのは、酔っ払いの妻でした。
こんな非常事態に何を考えているのか……咎める形名に、妻は胸中の策を告げるのですが……。
夜陰に空弓を鳴らす知略で、敵の包囲を緩めさせる「……こんな事もあろうかと、あらかじめ援軍を要請しておきました。日数から計算してもうすぐ到着する筈だから、あと少し時間を稼げれば活路が開けます」
「しかし……敵は明日にも総攻撃を仕掛けて来そうな勢いだぞ?」
蝦夷軍はもう柵のすぐ近くまで迫り、後は夜が明けるのを待ってゆっくり攻め落とすつもりのようです。
「……そうね。