元祖かかあ天下!飛鳥時代、絶体絶命の窮地を切り抜けた豪族の妻【下】 (3/4ページ)
「者ども、矢の届かぬところまで退がれ!」
砦の中には、まだ少なからぬ軍勢が残っている……そう思い込んで恐れをなした蝦夷軍はじりじりと後退し、包囲が少し緩みました。
「これでよし……でも、夜が明けたらハッタリがバレるから、その直前に撃って出ましょう。血路を斬り拓けたら援軍と合流して、リベンジを決めてやるのよ!」
そう言うと、妻は再び酒甕を呷り、形名に突き出します。
「呑みなさい」
「いや、俺は要らな『わたしのお酒が呑めないのかしら?』……はい、頂きます!」
現代ならアルコールハラスメントもいいところですが、ともあれ突き出された酒甕を呷る形名に、妻は優しく言いました。
活路は死中にこそ求むべし……起死回生の突撃で勝利を掴む「……大丈夫、必ず勝てます。だってあなたは、私が愛するただ一人のあなたなのだから……ね、そうでしょう?」
いっときの優劣は時の運……しかし途中で何があろうと、最後まで立って笑うヤツこそ勝者……そうとも。これまで何度となく修羅場に見舞われてきたが、この妻に又会いたくて、すべて生き抜いて来たじゃないか。
(……よく考えてみれば、敵よりも妻の方が百倍は怖い!)
もうすぐ夜が明ける。酒の酔いも手伝って、奮い立った形名は妻の差し出した愛刀を佩(は)き、愛馬に跨るや鞭声も颯爽と、兵士たちに号令を下します。
「これより敵中を突破し、援軍と合流する……者ども、続け!」
「「「おおぅ……っ!」」」
活路は死中にこそ求むべし……女子供は妻に任せて砦へ残し、少数精鋭で臨んだ形名らは緩んだ包囲の隙を衝いて蝦夷の軍勢を突破。すると、旭日の向こうから朝廷の援軍がやって来るのが見えました。
「味方だ……俺たち、助かったぞ!」
「これで勝てる……者ども、今こそ仲間の雪辱を果たす時ぞ……かかれ!」
かくして完全に形勢は逆転。