精神保健福祉士が考えるキューブラー・ロスの死への第3段階「取り引き」

| 心に残る家族葬
精神保健福祉士が考えるキューブラー・ロスの死への第3段階「取り引き」

もしも自分に残された時間が少ないと分かったら、人はどのようにその瞬間へ向かうのだろう。そこには、どのような心の変化が生まれるのだろう。アメリカの精神科医であったキューブラー・ロス(1926-2004)の著書「死ぬ瞬間」を参考として死への過程の第3段階「取り引き」について考察しようと思う。

■死への5段階への過程の中でも「取り引き」の時間は短い

取り引きは、時間としては短く、顕著ではない。しかしながら、確実に最期が近い人の心の助けになる期間であるという。起こり得る物事を避けたり、先延ばしにしたりする神への祈りのような気持ちを持ちながら過ごし、別の作戦を練っている時間だ。

■日常生活における具体的な「取り引き」とは

特定の信仰を持たない日本人からすれば、神へ祈るということはあまり馴染みのない感覚かもしれない。次のような例で考えてみよう。学生時代の最後や独身生活の最後に、「もう一度これがしたい」と考えたことはないだろうか。それは、友達と朝までカラオケで歌い尽くすというような計画を実行することである。何かの終わりが迫っている時、あなたは最後にやり残した願いを叶えるために考えを尽くし、それを実現させようとする。そして、その祈りが叶うことと引き換えに、学生時代や独身生活を彩る最後の経験を豊かに見届ける。

死が迫っている場合では、最期に何かやり残したことをやりたいと計画を立て、それまで命が続くよう祈ることを意味する。

■「それさえ叶えばあとはいらない」という死の直前における「取り引き」の矛盾

さて、ここで生じている矛盾にお気づきだろうか。どうか病気が治るようにと祈りながら、「最後にもう一度これがしたい」と取り引きをすること。それは、死が迫っていると知りながら、叶ってしまったらそれ以上は望まないという暗黙の了解であることを意味している。言葉には、その人の無意識が表れるようだ。最後に自分で言っていることの意味を考えると、それがいかなる想いか想像ができる。

■「取り引き」によって救われる

キューブラー・ロスによると、その暗黙の了解が守られることは一度もなかったそうだ。

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