マルチ商法にハマるのはごく普通の人たち。小説『マルチの子』を上梓した西尾潤さんも「普通」の若者だった――。実体験で感じた「ハマりやすい人」の3つの特徴とは?
夢はプロのミュージシャンになることだった。
ロック好きが高じて軽音部に所属し、バンド活動に明け暮れた高校時代。卒業後に就職したデザイン事務所も1年で辞めてしまい、夢を追いかけた。だが実力が伴っていなかった。小さなライブハウスに出演するのがやっとで、デビューなど果てしなく遠い。夢の途方もなさに気づき始めた19歳の頃、私はバイト先の先輩からマルチ商法に誘われた。
「めっちゃすごいビジネスの話、教えたるわ」
先輩は目を輝かせながら、私に語った。とある商品を紹介し、買ってもらえたら紹介料をもらえること。月収100万円以上の人がざらにいること。20歳以上であることがビジネスを始める条件なこと。世間知らずで考えが甘かった私は、その話に大いに惹かれた。
「やってみたいです」
気づけばそう言っていた。このままバンドを続けていても未来はない。そんな私に、先輩の語る景気のいい話は甘く響いた。
「さすが西尾ちゃん。そう言うと思ったわ。これはチャンスやで」
2ヶ月後。
20歳の誕生日の翌日、私はそのビジネスに入会した。
2年半後。