沖縄県知事選で翁長雄志・前那覇市長が、他の候補者に大差をつけて当選。焦点の米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古地区への移設については、
「埋め立て承認の取り消し、撤回に向けて知事権限を行使する」
と、勝利後の記者会見で強調した。
沖縄県と名護市が、ともに辺野古移設反対派を首長に選んだことで、国と地元との対立がより鮮明となり、移設工事に暗雲が漂っているが、既に地元では建設業者の“意”を汲みながら準備が進められている。
受注資格は1社だけ――事実上の談合か
政府は、2013年6月6日、「(辺野古地区の)キャンプ・シュワブ仮設工事」の入札を行い、大成建設が55億2000万円で落札した。これは本体準備工事と位置付けられるもの。
この入札の事実を、発注元の沖縄防衛局は、一切、公表しなかった。事業の執行に悪影響を及ぼす反対運動を避けるため、ということだが、それより問題視されたのは、受注した大成建設以外の参加業者が、鹿島建設、清水建設JV(共同事業体)、大林組JVと本土のスーパーゼネコン4社で構成、談合が疑われることだった。
大成建設以外は56億3600万円の予定価格を超過していて条件を満たしておらず、受注資格は1社だけ。疑われるのも無理はない。当然、沖縄県の地元建設業者は反発する。
「地域振興策といいながら、結局、工事の“おいしい部分”は、本土ゼネコンが持って行く」(地元建設業者)
というわけだ。
そうした不満に配慮した沖縄防衛局の入札公告が、10月24日、沖縄知事選公示直前に行われた。埋め立て予定区域の外周部の約3割にあたる護岸整備など計6件。具体的には、コンクリート製の箱であるケーソン新設が3工区と護岸新設工事絡みが3工区。2015年2月頃までに開札し、年度内に業者を選定することになっている。
工事は、総延長4900メートルの外周のうちの約1300メートルを整備するもの。本格的な埋め立てに向け、土砂を搬入する際の仕切りとなり、本体工事の一部といっていい。それがかなり細かく発注されたのは、地元業者への配慮だという。
準備工事のように、大手ゼネコンがゴッソリと持って行くのではなく、分割で受注できる業者の数を増やす。今後も、国は同様の配慮をするし、それを地元業者は期待する。
そこまでの“意”を受けながら進んでいる移設工事を、翁長氏は具体的にどう止めるのか。新知事の苦労が始まるのはこれからだ。
- 伊藤博敏
- ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数