十分な準備が必要! 弁護士に聞いた、 「離婚したいのに離婚できない」ケース
皆さんの周りに「離婚」を経験した人はいらっしゃいますか? 中には、現在離婚を希望している人もいらっしゃるかもしれませんね。でも、離婚というのはそうすんなりとできないケースもあるようなのです。
アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士にお話を伺いました。
■日本では離婚の種類は四つある!
——離婚したいという希望があるのに、離婚できないケースというのはありますか? もしあるとしたらどんなケースでしょうか?
篠田弁護士 「離婚したいのに離婚できない」ケースというのは、結論としては、
「離婚裁判を起こしたとしても、法律上の離婚原因がなく、最後まで和解も成立しない場合」
といえます。
——なるほど。漠然と離婚を希望するみたいなケースでしょうか。
篠田弁護士 日本では、離婚の種類としては大きく分けて四つあります。
1.協議離婚
2.調停離婚
3.和解離婚
4.判決離婚
です。
——それぞれどのようなものでしょうか。
●「協議離婚」
これはお互いが「離婚しよう」と合意の上で離婚届を役所に提出するものです。日本ではおよそ9割近くがこの「協議離婚」による離婚といわれています。
このように、夫婦の話し合いにより「離婚の合意」が成立すれば当然離婚できるわけです。協議離婚の場合でも、夫婦の話し合いが功を奏さないような場合は、間に弁護士が入って話し合いをまとめるケースもあります。
●「調停離婚」
これは、家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所での話し合いにより離婚が成立するケースです。この場合も、弁護士が付く場合、付かない場合とありますが、調停委員や裁判官の関与により、二人の間に「離婚の合意」ができ、離婚が成立することになります。
なお、審判離婚といって、調停がまとまらない場合に家庭裁判所の判断(審判)で離婚するという手続きもありますが、あまり利用されていないといわれています。
●「和解離婚」
「和解離婚」は裁判所での和解成立により離婚を成立させるものです。
●「判決離婚」
裁判所が「離婚しなさい」という判決を下すことによって離婚を成立させるものです。
話し合いによっても、調停によっても、「離婚の合意」ができない場合には、最終的には離婚裁判を起こして、「和解離婚」か「判決離婚」を狙うほかありません。
——裁判所が絡むわけですね。
篠田弁護士 「和解離婚」は、「裁判まで起こして泥沼の争いになったが、判決ではなく結局話し合いで離婚しましょう」という流れに至れた場合の手続きです。調停等とは異なり、裁判官の「判決になった場合の結果(離婚を認めるか認めないかなど)」の心証がある程度見えるという点がポイントです。
——裁判官の心証が重要なのですね。
篠田弁護士 裁判官の心証を踏まえて、慰謝料や財産分与などの諸条件も詰められることになりますので、調停の段階よりは話し合いがまとまりやすいといえるとは思います。
しかしながら、この段階になっても、「この条件では和解には応じられない」「絶対に離婚はしない」という一方の言い分が変わらなかった場合には、最終的には裁判所の判断を仰がざるを得ないことになります。
■「別居期間3年あれば離婚できる」はうそ!
——裁判所の判断はどのように下されるのでしょうか?
篠田弁護士 裁判所が「離婚しなさい」という判決を下すためには、民法770条に列挙された以下の離婚原因がなければならないとされています。
(1) 配偶者に不貞な行為があったとき
(2) 配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3) 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
(4) 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5) その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
特に多く用いられるのは
(5)婚姻を継続し難い重大な事由
ですが、日本でこれを認めるハードルは相当に高いといわれています。
都市伝説のようにいわれている「別居期間3年あれば離婚できる」といった形式的な判断で認められることはありません。
——あれは都市伝説なのですね(笑)。
篠田弁護士 心変わりや性格の不一致といった理由ではほとんど認められないですし、夫婦関係破綻の事情が相当大きくないと難しいといえます。
特に、浮気をした側から離婚請求をした場合などは、「有責配偶者からの離婚請求」ということで、裁判所は相当厳しい見方をします。なので、このような場合は、別居期間が相当長期にわたり、その間も生活費をしっかり入れていた等の事情が整わない限り「原則離婚は認められない」と覚悟した方がよいでしょう。
■離婚希望者が復縁に至るケースとはどんなもの!?
——先生の手がけられたケースで、話せる範囲で結構ですので、「離婚を希望しているのに離婚できなかった、あるいは離婚に至らなかった」というものがあったら、それがどんな内容だったかを教えてください。
篠田弁護士 相手方から離婚請求をされて、迷いながらご相談にいらした方は、話し合いの結果、離婚しないという結論に至るケースもままあります。
しかし、たいていの場合は、「離婚したい」という強い決意の下ご相談にみえる方が多いので、こうなるとやはり円満に「やっぱり復縁します」という結論に至る方はなかなか少ないのが現状です。
——離婚という決意がなかなか覆られないのですね。
篠田弁護士 「夫と離婚することは決まっているが、慰謝料や面会交流などについて条件がまとまらない」という理由で、「条件がまとまる見通しがつかない以上は、しばらく離婚はしないで別居を続け、先が見えるまで子育てのためにも生活費を毎月しっかり入れてもらう」という選択肢を選ばれる方はいらっしゃいます。
離婚後の養育費の支払いが不安という理由や、「夫が不倫相手と再婚したいなんて許せない」という理由で離婚の選択を慎重にされる方もいらっしゃいます。
——気持ちの折り合いがつかない場合もある、と。
篠田弁護士 また、「夫が態度を改めてくれたので離婚を考え直した」という円満復縁の方も、数は少ないですがいらっしゃいます。
夫の横暴な態度や発言等に耐えられなくなった妻が、「離婚しかもう考えられません」として相談にみえ、別居に至った案件がありました。このケースでは、夫が「妻に弁護士が付いた」という事実に直面し、真剣に自身の行動を省みたことが大きかったです。
さらに、「一人で生活することで妻や子供たちの存在のありがたさに気付いた」ことも相まって、その後は横暴夫は生まれ変わったように「優しい夫」に変貌を遂げ、その後も「夫婦円満で暮らしています」というご報告をしていただけることとなりました。このように、ほほ笑ましい復縁案件もあります。
——旦那さんが変わったというのがすごいですね。
篠田弁護士 妻が、夫の横暴さに我慢できなくなり、別居の上離婚の話し合いを続ける中、財産分与のために夫名義の不動産を仮差し押さえしたという案件もあります。仮差し押さえをされ、びっくりした夫が真摯(しんし)に反省し、妻に謝罪し、「一緒に暮らしましょう」という話し合いが功を奏し、円満解決に至ったという事例もあります。
夫婦の一方が離婚を希望しても、相手方の不貞や長期の別居等の離婚原因がない限り、裁判で離婚を認めてもらうのは非常に厳しいため、相手もそれを分かっていて離婚には応じてくれない、として話し合いが長引いてしまうケースはあります。
そのため、将来裁判を起こすまでの間、別居を続けて、別居期間を稼ぎ、時期が来たときに裁判を起こすという「籍を入れたまま別居を継続」という選択をされる方もいらっしゃいます。やはり、日本では「裁判(判決)離婚」のハードルが高いために、簡単には離婚できないということを肝に銘じていただく必要はあります。
■離婚には十分な準備と計算が必要! 人生の再スタートのために!
——離婚を希望する人にアドバイスがあればぜひお願いいたします。
篠田弁護士 「離婚」という問題に直面した場合には、「とにかく早く別れたい」という気持ちから、離婚届を焦って出してしまう方も多くいらっしゃいます。ただし、「焦って離婚」は禁物です。
まれではありますが、「離婚を固く決意したにもかかわらず円満復縁に至った」ケースもありますし、そもそも「離婚すべきか否か」はもちろん、「自身の努力や相手の改善によって離婚を回避できないか」の検討も必要です。
——やはり離婚は大ごとですものね。
篠田弁護士 離婚するとなれば、当事者である妻や夫はもちろんですが、子供や親族等にも大きな影響を与えることが考えられます。引っ越しに伴う「転校」や氏の変更なども、お子さんにとっては、人生の大きな転換期となり得るわけです。
また、いざ離婚した後に、「生活できない」となってしまっては元も子もありませんので、離婚後の生活設計をしっかり立てることも必要です。引っ越す場合は引っ越し代や、引っ越し先をどうするかの問題、さらには、離婚時にどれだけ給付を受けることができるか(慰謝料や財産分与等)もしっかり吟味することが必要です。
——緻密な検討が必要ということですね。
篠田弁護士 焦って離婚してしまっては、非常に不利な条件で離婚せざるを得なかったり、取り決めるべき事項を取り決めなかったがために、後にトラブルが再燃してしまったり、ということもあり得ます。離婚に関しては専門的な法的知識があればあるほど強いので、ぜひその場合は専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
夫婦関係の修復の可能性がないのであれば、離婚という選択肢を選ばざるを得ないかもしれませんが、仮に離婚するのであれば、これを新たな人生の再スタートとして、いい人生を送るためのステップにせねばなりません。
そのためには、離婚の条件はなるべく有利な条件でまとめる必要がありますし、すべき主張や取り決めるべき項目も漏れがあってはいけません。
——再スタートのためにやるべきことは全てやる! わけですね。
篠田弁護士 離婚の際の取り決めをいったん書面で作成した場合、後でこれを覆すことは難しくなります。また、慰謝料は離婚時より3年、財産分与は離婚時より2年経過すると、原則として請求できなくなってしまいます。このように、離婚時の取り決めをしっかり行っておかないと、請求できるものも請求できなくなってしまう恐れがあります。
離婚の際にはしっかり確認することは確認し、やれるだけのことはやった上で、自身も納得ができる条件で離婚をすることが大事です。そして、その離婚を、今後の幸せにつなげられることが理想ですね。
——ありがとうございました。
日本では、裁判所から「離婚すべし」という判断を取り付けるのはかなり難しいようです。またやはり離婚には十分な準備が必要とのことでした。今、離婚を考えている皆さんは今回の篠田さんのアドバイスをぜひ参考にしてください。弁護士さんに相談するのは早い方がいいみたいですよ。
⇒『アディーレ法律事務所』公式サイト
http://www.adire.jp/
(高橋モータース@dcp)