映画『遊星からの物体X』の「それ」登場シーンの製作秘話 (5/5ページ)
本シーンは後日撮影されることとなりましたが、数ヶ月にわたってハラハンモデルを仕上げたというボッティンとチームのガックリ感は相当なものだったでしょう。
本作のVFXを支えた若きボッティンですが、1日たりとも休むことなく57週間ぶっ続けで働き、スタジオに泊まることも少なくありませんでした。撮影が終わるとカーペンター監督は、ボロボロに疲れ果てたボッディンに病院で体を徹底的に休めるよう、命令したそうです。
数え切れない努力が積み重なって出来上がった『遊星からの物体X』はカーペンター監督を非常に満足させる作品となりましたが、1500万ドルの制作費に対して、1900万ドルの収益しか上げられず、興行成績的には成功したとは言えません。
というのも、本作の2週間前にスティーブン・スピルバーグ監督の『E.T.』が公開されており、世間はハートウォーミングなエイリアンにゾッコンで、人間を攻撃するエイリアンを受け入れる気分ではなかったのです。
評論家たちからの評価は、それはそれは酷いもので、カーペンター監督は「暴力のポルノ製作者」とまで呼ばれるはめに......。
しかし時が経ち、その気が滅入るような絶望的な設定と暗い雰囲気、プラクティカル・エフェクトで作り上げたゴアなクリーチャーがCG全盛期の今では珍しいものとなり、現在では傑作とされています。
イギリスの南極大陸研究所では毎年、冬初日に夜通し『遊星からの物体X』と『遊星からの物体X ファーストコンタクト』、『遊星よりの物体X』が上映され、長い冬をより一層寒くするのに一役買っているのだそうです。
The Thing's Defibrillator Chest Chomp - Art of the Scene[YouTube]
(中川真知子)