「16世紀のホラ吹き男」から学ぶ!? 売れっ子作家になる方法 (3/3ページ)

FUTURUS

それから俺は――」

終始このような調子である。確かに当時の冒険商人でしか知り得ない情報に満ちてはいるが、ピントはあちこちで起こった事件の当事者をすべて自分だとしている。

だから、本国ポルトガルでは「フェルナン・メンデス・ピント」という名はホラ吹きの代名詞になった。誰しもがピントの本の記述を、「またホラが書いてある」と言って笑った。本など読んだことのない子どもですらも、いつの間にか「ホラ吹きピント」という言葉を使っている。

すなわち、それだけピントの本が売れたということだ。


■ 物書きの「自己抑制」

「事実の改竄」と「ホラ」は、似ているようで大きく違う。

ホラ吹きがなぜホラを吹くかと言えば、それは「人を楽しませるため」である。自伝を書くという作業は、著者がどのような経歴の人物であってもいざ書いてみると、案外つまらないものに仕上がってしまいがちだ。文章というのは恐ろしいもので、どんなに劇的な人間の半生記でも起こったことをただ箇条書きすれば、それは至極平凡な人生に見えてしまう。

平凡なことしか書いてない自伝を買う奴はいない。ならば、旅の先々で聞き及んだ事件に無理やり俺を登場させてしまおう。万里の長城のことなんか、俺は他の商人から話を聞いただけだ。だが俺の自伝には「万里の長城の建設作業に携わった」と書いちまおう。そうすれば、みんな俺の自伝を笑いながらも熱心に読んでくれるはずだ。

こういう態度でいれば、少なくとも文章の中で他人を中傷してしまうことはない。ピントの文筆家としての態度は、非常に優秀と言える。

インターネットの普及した現代、「物書きになりたい」「作家として収入を得たい」と考える人が増えた。ブログやSNSで自分の意見を世間に公開することが容易になり、その流れでもしや自分も物書きとして稼ぐことができるのではと考えてしまう。

だが、いざそれをやろうとすると殆どの物書き志願者が「自分に書けるものがあまりない」という現実に突き当たる。その悩みを解決する手っ取り早い手段が、「事実の改竄」と「他人の誹謗中傷」だ。特に話題の有名人の言葉を頭ごなしに嘘と決めつけ、「実はこれこれこういうことが真実だ。あいつは嘘つきだ」と言えば、日常生活の退屈に不満を持つ一部のネットユーザーはすぐに飛びつく。

ネット上に飛び交う心ない罵詈雑言は、結局はそうした負の心理に基づくものだ。いつでもどこでも己の主張を公にすることができる現代、我々は文章を書く上での「自己抑制」を真剣に考えなければならない。

そのためのヒントを、16世紀の偉大なホラ吹きが教えてくれている。

【参考・画像】

※ Africa Studio/shutterstock

※  CoCoRo cafe / PIXTA

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