白紙になったインドネシア高速鉄道計画 …問題視される「ジャワ島偏重」 (2/4ページ)
ところが、そんなゴーベル氏は8月に貿易相を辞任した。内閣改造の際に、続投の声がかからなかったのだ。これは明らかに引責辞任だった。実はインドネシアでは、7月から8月にかけて「牛肉ショック」というものがあった。牛肉の価格が、地域にもよるが30~40パーセントほど高騰してしまったのだ。中には50パーセントアップという都市もある。
もっとも、この国の場合はラマダン明けに牛肉価格が高くなる。それ自体は毎年の出来事だ。だが今回は、そんな牛肉価格が時期を過ぎても高止まりしている。インドネシア政府が、オーストラリアからの牛の輸入枠を厳格化したからだ。
インドネシアとオーストラリアの外交関係は、はっきり言って険悪である。今年に入ってからもオーストラリア人死刑囚の恩赦を巡って、両国の首脳が対立した。しかもオーストラリアの現首相は、「失言の多いヘビー級ボクサー」として知られるトニー・アボット氏だ。
「インドネシアは、スマトラ地震の時にオーストラリアから受けた恩を忘れたのか!」
アボット氏の余計な一言は、インドネシア市民の怒りを買った。
ところが現実問題として、インドネシアの食料事情はオーストラリアに大きく依存している。かつては東南アジアの穀倉地帯として知られてきたインドネシアだが、今や自国のみで食料を賄うことはできない。肉にしろ穀物にしろ、世界有数の農業国オーストラリアに頼っている状態だ。
にもかかわらず、インドネシアは無謀をやらかしてしまった。そして食用牛の輸入枠の大幅縮小という決定を出したのは、他でもないゴーベル氏なのだ。
■ 中国側のPR活動
そのような経緯で、閣僚随一の知日派は政界を去った。
このことは日本の鉄道関係者に、大きなショックをもたらした。だが中国側にとっては日本を蹴落とすチャンスである。「待ってました」とばかりに、ジャカルタで高速鉄道計画をPRするイベントを催した。
日本の鉄道企業は「新幹線の安全性」を第一にアピールするが、それは中国も同じである。2011年7月に温州市で発生した高速鉄道の衝突事故は、対外セールスに大きな悪影響を及ぼした。「あの国の高速鉄道は大丈夫なのか?」。