白紙になったインドネシア高速鉄道計画 …問題視される「ジャワ島偏重」 (3/4ページ)
中国側は、そのような悪評を払拭したい。
ちなみに筆者は、例の事故があったちょうどその時杭州にいた。しかも事故車両に乗る予定だったのだ。その頃はアテのない放浪をしていて、バックパックを背負いあちこちをカラスのようにさまよっていた。高速鉄道よりも長距離バスの方が料金が安かったから、乗るのを諦めたというだけのことだ。もしそうでなかったら、筆者はこうして記事を書いていなかった。
話は脱線したが、そのような理由で中国側は「安全な高速鉄道」の宣伝に必死だ。「我が国の高速鉄道は、例の事故で露呈した問題点を完璧に改善しました。そうしつつも安い工費で素早い建設が可能です」。総括すれば、これが中国側の宣伝文句である。
だが結果的に、この文句も現政権の閣僚全員を説得することができなかった。かといって、日本側の新幹線計画を積極的に支持する者が多数に上ったというわけでもない。インドネシアの政治家の多くは、こう考えている。
「日中どちらの高速鉄道を選ぶにしろ、莫大な額のカネが必要になる。そのカネでジャワ島以外のインフラを整備できないのか」
この意見は、確かに正論だ。
■ ジャワ島以外でのインフラ整備
高速鉄道は魅力的だ。だが政治家は、一般市民の持つ票から選ばれている。そしてここで言う「一般市民」とは、ジャワ島の都市部に住まう人間だけを指してはいない。
インドネシアという国の素晴らしい点は、「ジャカルタ市民も地方の少数民族も、同等の政治的権利が保証されている」ということだ。ミャンマーのロヒンギャ族のように、国民としての権利が一切認められていない少数コミュニティーは存在しない。だからといって差別や現実的な苦難がないというわけではないが、少なくとも法律の上では誰しもが選挙権を有している。
なのになぜ、ジャワ島にばかり特殊なインフラが次々と整備されるのだろうか。これはジャワ偏重主義ではないのか。そのような声が出るのは当然である。
だからこそ現大統領のジョコ・ウィドド氏、そして去年の選挙で対立候補だったプラボウォ・スビアント氏も、公約に「地方間格差の是正」を掲げていた。公約を途中で投げ出してしまうわけにはいかない。