米大統領選がプロレス化!? 最有力候補トランプはまるで「バディ・ロジャース2世」 (2/4ページ)
そしてその『WWWF』の初代チャンピオンが、バディ・ロジャースなのだ。
ロジャースのスタイルを一言で言えば、“高慢ちきなエスタブリッシュメント”である。腐るほどの金を持っている、アメリカ最古参移民の白人。だからロジャースは、労働者や後発移民、有色人種を見下す発言を繰り返す。
このレスラーについて、ライターの柳澤健氏が著作『1964年のジャイアント馬場』において興味深い考証をしている。
<ロジャースは、誰もが心の中に秘めつつも、決して表に出すことのできない“反社会的で幼児的な自己愛願望”をリング上で全面的に解放した。
大人の世界では決して通用せず、病気としか思えないような子供っぽいナルシシズムが、プロレスのリング上では全開となる。だからこそロジャースは真面目な大人たちから罵声を浴びつつ、若い女性や子供たちから熱狂的な支持を集めたのである。>
ロジャースの言動も一種の“炎上商法”と言えるかもしれない。だが、プロレスというのは、“歓声”と“罵声”はまったく同じ意味合いを持つ。いいレスラーは“大衆から注目されるレスラー”であり、人々の関心を集めることができない三流レスラーには、その“罵声”すら飛ばない。
そして人々の心の中には、「すべてのしがらみから解放されたい」という密かな願望がある。口に出さないまでも、誰しもがサディスティックで差別的な感情を少なからず抱いている。もちろんそれを口にしたら最後、その人の社会的信用は跡形もなく吹っ飛んでしまう。
だが、それを自由に叫ぶことのできる場所がこの世に存在したら? SNSで著名人が良識を疑われるレベルの問題発言をし、またそれを積極的に支持するネットユーザーが一定数いるのは、そういう理屈だ。
■ 歓声と罵声
ロジャースは“しがらみとは無縁の男”を演じることで、毎回のように試合会場に万単位の観客を集めた。彼が本当に大衆から冷たい目で見られていたのなら、番号のついた椅子、つまり指定席はどれも無人だったはずだ。“憎むべき男”の姿格好を、わざわざ金を出して見る人間はいない。
観客の誰しもが、実は心のどこかでロジャースに憧れている。