戦時の小説家が行っていた「戦争協力」とは? (1/3ページ)
出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
第72回の今回は、新刊『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』(新潮社/刊)を刊行した葉室麟さんが登場してくださいました。
この作品で葉室さんが書いたのは、「仙台騒動」「加賀騒動」と並ぶ江戸時代の「日本三大騒動」の一つである「黒田騒動」。
福岡藩の重臣であった栗山大膳が、主君の黒田忠之を訴えたことで知られるこの騒動ですが、その内実は単純ではありません。当時の江戸幕府や長崎奉行、近隣の藩など、様々な人々の思惑と社会情勢が絡み合うなか、大膳はなぜ主君を告発しなければならなかったのでしょうか?
今回は葉室さんにこの作品の成り立ちや当時の時代背景、そして「歴史」をひも解くことの意味など、さまざまなテーマについて語っていただきました。
■戦前生まれの作家にとって「戦争」は大きなテーマだった。
――歴史から物語を作り上げていくために、どんなことを大事にされていますか?
葉室:自分ではよくわからないのですが、僕は昔新聞記者をやっていて、取材によって得た事実を積み重ねて真実に迫るということを仕事にしていました。でも、事実というのはいくら積み重ねても「真実」には至らないんだなと思わされることがたびたびあって、実は事実ではなくむしろフィクション的なことを重ね合わせた時に、「真実」に到達できるんじゃないかということを考えるようになったんです。
よく「虚実皮膜の間を縫う」と言いますが、史実にどれだけフィクションを重ねられるかということはいつも心がけています。
――何か具体的な経験があって、そういった考え方に変わっていったのでしょうか。
葉室:具体的に何かあったというわけではないのですが、新聞記者の仕事というのは、物事の表面に出てきていることを、ある意味並べるしかないわけです。
たとえば、政治にいろいろな動きがあったとして、それをどんなに調べたところで当事者の心の中まではわかりませんよね。そういう意味での限界は感じていました。