外国人観光客はヒロシマを目指す、顕著化する日本人との「意識格差」と国民の誤解 (3/4ページ)

FUTURUS

この日ばかりは堂々とした巨体を縮めるかのように、ただただ惨劇の遺物に息を飲んでいた。

のちにセミーは格闘技雑誌の取材で、「平和記念資料館を見学し、人類がいかに愚かな行為をしてしまったのかを知ることができた」と語っている。幼い頃から極真空手に打ち込み、常に日本へのリスペクトを胸に戦ってきたロッテルダム出身の戦士が「日本を知るために」と考え、行き着いた先が広島だったのだ。

そういえば、“鉄の爪”と呼ばれたプロレスラーのフリッツ・フォン・エリックにもそのようなエピソードがある。まだ幼かった息子たちを連れ、「いいか、よく聞きなさい。戦争など決して繰り返してはいけないものだ」と語っていたそうだ。

格闘家やプロレスラーは、日本以外の国ではストリッパーやポルノ俳優と同じレベルの扱いである。だが、日本では一流アスリートとして誰しもが尊敬の眼差しを向けてくれる。だからセミーもエリックも親日家になった。そして真面目な彼らは、そうした“日本人の精神”の源泉を探ろうとする。

広島で彼らを目撃することは、決して偶然ではないのだ。

■ 広島への誤解

広島は“左翼運動家の巣窟”というイメージを持っている人がいる。それに嫌気が差し、広島に足を向けなくなったということも否定できない。

日本人は“オンブズマン”や“市民ネットワーク”という概念を理解しないまま、市民運動を始めてしまったきらいがある。一言で言えば、日本人はこれらを“隣組”だと思っている。だからメンバーの脱退を考慮に入れていないし、そもそも「誰しも意志は同じで一蓮托生」と考えている。

自分たちは公的機関を監視するが、自分たちが監視されることを嫌がる。“オンブズマン”とは、誰かが暴走しないように互いが互いを監視する制度なのだが。

そしてそんな息詰まるような隣組の集会所に、好んで行きたがる人間などあまりいない。だが“広島は左翼運動家の巣窟”という考え方は、実は単なる誤解に過ぎない。大体、小選挙区の広島1区は長い間自民党の岸田文雄氏を当選させているではないか。ここは日本有数の保守王国である。

さらに言えば、「広島の過去を知る」ことと「市民運動に参加する」というのはまったく次元の違う話である。

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