酒を飲むイスラム教徒 「戒律」と「教条」の間で生きる (3/3ページ)
■ ハリルホジッチの怒り
男子サッカー日本代表のヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、ヘルツェゴヴィナ地方出身のイスラム教徒である。
ハリルホジッチ氏がアルジェリア代表の監督を務めていた時、記者会見でこんな質問をされた。
「イスラム教徒の選手たちは、断食を行うのでしょうか?」
これに対し、ハリルホジッチ氏は激怒した。宗教的な戒律に従うか従わないかは、あくまでも選手自身のプライベートの問題と切って捨てたのだ。
ハリルホジッチ氏はかつて、ボスニア紛争を経験し命を落としかけている。サッカーを愛し、カトリック信者や正教会信者ともプレーしてきた彼は、宗教戦争の愚かさをよく知っている。そして、宗教戦争の原因は人々が極度の教条主義に陥った結果だということも。
信仰の在り方は人それぞれだ。そこに他人の意見が介入する余地はない。そんな当たり前のことのために、ハリルホジッチ氏は声を荒げたのだ。
飲酒もまた然りである。飲みたい人が節度を持って楽しむのなら、そこに横槍は必要ない。世界16億のイスラム教徒の大半は、そう考えている。
そのような思考を許しているイスラム教は、やはり“寛容な宗教”なのだ。そしてこの点は、東京オリンピックを控えている、日本国民が意識するべきことではないのか。
我々日本人は「イスラム教徒だから」、「キリスト教徒だから」という視点で、特定の集団の人々を一様に捉えてしまう。
それは気遣いかもしれないが、同時に偏見や差別にもなり得る。
「価値観や生き方は世界人口の数だけ存在する」ということを常に心に留めておきながら、我々は5年後の光景を想像するべきではないのか。
そう、東京オリンピックまであまり時間はないのである。
【参考・画像】
※ 戒律の国・インドネシア 酒を楽しむ人増加(NHK)
※ アルジェリア代表ハリルホジッチ監督、ラマダンに関する質問に怒り(サッカーキング)
※ Jag_cz / Shutterstock