心霊スポットだと噂の石川県のS町に行ってみた話【ささや怪談】 (2/3ページ)
正直に言って、近江町市場の地下にあるカフェや横安江町商店街に行ったほうが、よっぽど「金沢」らしい。
わたしは、二時間ほど歩き通した。雨が降る中、とぼとぼと散歩を続けた。喫茶店もコンビニも見つからず、くたびれたところだった。こんなことなら、あめの俵屋の本店に行ったほうが、有意義だった。
すると、向こうから、誰かがやってくる。
若い女性のようだ。白いコートに、ピンク色の傘を差している。ただ、近づくにつれて、ちぐはぐな感じがした。
青白いのだ。
顔が。
彼女とすれ違った時、わたしは見た。
白塗りの顔。
たぶん、その町の風習かお祭りか、体調がすぐれなかったのだろう。
わたしは、早歩きでバス停に向かった。すると、道の真ん中に、老婆が立っている。老婆は、立ち読みをしている。革手帳のような本を。雨だというのに、傘も差さずに。必死な顔をしながら、ぐしょぬれのページを捲っている。怒ったような形相を浮かべながら。
声をかけようとは、思わなかった。
おそらく、本の続きが気になって、しょうがなかったのだろう。
わたしは、バスに乗ってS町を出た。
雨に打たれて、身体が震えていた。バスが中心街に入ってから、両肩がキリキリと痛み出し、刺すような腹痛にも襲われた。もちろん、これは偶然だ。わたしは、痛む身体を誤魔化して、次の目的地に向かった。
バスを降りると、友人に電話を掛けたくなった。
なぜか、今すぐに、電話をしなければいけない気がした。
何度目かのコールの後に、友人の妻が出た。
そして、こう告げた。
「あのね、亡くなったの。あのひと」
そこから先のことは、記さない。

S町から車で一時間の海岸。日本海の厳しさを物語る光景だ。