心霊スポットだと噂の石川県のS町に行ってみた話【ささや怪談】 (1/3ページ)

Jタウンネット

S町から車で一時間の漁港。近くの回転寿司屋が素晴らしい。
S町から車で一時間の漁港。近くの回転寿司屋が素晴らしい。

『石川県に、霊感の強い人がいっぱい住んでいる町があるんだって。
行ってみてよ。
きっと何か見つかるから!』

そんなメールが、Tさんから届いた。
彼女は、東北のある県の観光大使を務めている。わたしは、彼女からときどき、不思議以上怪談未満な話を集めていた。
彼女の知り合いが、石川を旅行で訪れた時に、そういう町に行きあたったのだという。
その知り合いも、幽霊を見たそうだ。ただ、どんな幽霊だったかまでは、教えて貰えなかったという。その町全体が、巨大な心霊スポットなのだという。

『だから、前田くん、チャンスだと思って行っておいで!里帰りも兼ねて!』
Tさんの言葉とは裏腹に、わたしの気分は冴えなかった。
わたしは、心霊スポットが大嫌いだからだ。

わたしは、石川県で生まれ育った。
しかし、その町の名前に、心当たりは無かった。
去年の大晦日に、わたしは、Sという町を訪れた。バスに乗って、一時間ほど揺られる。海岸線をひとしきり眺めたら、中心街をすり抜けて、郊外へと進んでゆく。
霊感なんて、わたしには無い。あったところで、気分が重くなるだけだ。
おまけに、外は雨だった。
バスを降りると、新興住宅地が広がっていた。まだ午前中なのに、人っ子一人歩いていない。それでも、リンスや年越しそばのダシの香りが、あちこちから漂っている。
Sという町は、山を切り拓いて作られたようだった。大きくなだらかな坂に、家々が礼儀正しく並んでいる。だが、道をすこし外れると、田畑や山に行ってしまう。そして、川のせせらぎの音が、どこからか聞こえてくる。自然に近い町だが、夜の闇は深そうだ。


S町から車で一時間の漁港。近くの回転寿司屋が素晴らしい。

事前に、石川の心霊スポットを調べておいた。だが、S町には、幽霊の噂ひとつ無いようだった。おまけに、Tさんの知り合いは、石川県の方ではない。文献も調べては見たが、それらしい曰くは、まったく判らなかった。

坂を上ったり下ったりしたが、誰にも会わなかった。ただ、変わらぬ町並みが続くだけだった。それでも、住宅と住宅の間に墓地があって、眩暈がした。ひと気はあるのだが、誰にも会うことが無い。

「心霊スポットだと噂の石川県のS町に行ってみた話【ささや怪談】」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る