【プロ野球】ヒジの靭帯再建手術で知られる“トミー・ジョン投手”の数奇な生涯

デイリーニュースオンライン

2010年4月にトミー・ジョン手術を受けた田澤純一(レッドソックス)
2010年4月にトミー・ジョン手術を受けた田澤純一(レッドソックス)

 1月8日、広島からポスティング公示されていた前田健太のドジャース入団が発表された。当初はダイヤモンドバックス入りが確実といわれながらの二転三転。マエケンの新たな船出を野球ファン全体が応援している。

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■田澤純一ら、多くの投手が経験

 しかし、入団に際してはドタバタも。大きな要因はドジャースの慎重なメディカルチェックだった。それもそのはず、日本人投手はメジャーに入ってから、ヒジの靭帯再建手術、いわゆるトミー・ジョン手術に至るケガをする選手が多い。

 田澤純一、松坂大輔、和田毅、藤川球児、ダルビッシュ有…。田中将大も近年「トミー・ジョン手術か!?」と幾度となく報じられている。

 このように今では多くの選手が行っている「トミー・ジョン手術」。そもそもこのトミー・ジョン手術はいわゆる通称で、1974年にドジャースの主戦投手であったトミー・ジョンが初めて敢行したことから定着した。

 成功率はわずか1パーセント(当時)とも言われる中、左ヒジにメスを入れたトミー・ジョンはどんな投手だったのだろうか?

■大復活で46歳まで現役!

 1943年生まれ。左投右打。高校時代はバスケットボールもプレーし、インディアナ州のテレホートでは1試合での最多得点を記録したこともある名プレーヤーだった。しかし、トミー・ジョンは将来の道を野球に求め、インディアンズと契約した。

 1963年、トミー・ジョンはわずか20歳でメジャーデビューを果たし、その後、移籍したホワイトソックスでめきめきと成長。移籍1年目の1965年に 14勝7敗、防御率3.09の成績を残すと、翌年からも14勝、10勝、10勝と4年連続2ケタ勝利。1968年にはMLBオールスターゲームにも選出された。

 シンカーを決め球にゴロを打たせる狡猾なピッチングでホワイトソックス在籍7年間で82勝を挙げたトミー・ジョンは1972年にドジャースに移籍。ここでも1年目から11勝5敗、防御率2.89の好成績。2年目には16勝7敗で最多勝率のタイトルを手にしている。

 移籍3年目の1974年は7月の時点で13勝3敗の好成績。2年連続のタイトル獲得が見えてきたトミー・ジョンだったが、7月17日のエクスポズ戦で左ヒジ靭帯がなんと断裂。ここまでのメジャー生活はほぼ皆勤。2749.2回を投げたツケが一気に回ってきたのだった。

■フランク・ジョーブ博士の存在

 日常生活にも支障をきたすとも言われた大ケガ。当時のMLBは過投時代でもあり、多くの投手がケガで引退を余儀なくされるケースも多かった。

 同じドジャースでは1966年にその年まで5年連続最優秀防御率、2年連続最多勝、2年連続3回目のサイヤング賞を獲得した圧倒的エースのサンディー・コーファックスが左ヒジの痛みを理由にわずか30歳で電撃引退。その際に「野球を辞めた後も続く人生を健康な身体で送りたい」と語ったほどの時代でもあった。

 多くのファンはトミー・ジョンもこのまま選手生命を絶ってしまうのだと肩を落としていた。しかし、そこで立ち上がったのが、ドジャースの医療コンサルタントを務めていたフランク・ジョーブ博士。

 トミー・ジョンは彼が発案したヒザの不要な靭帯をヒジに再建する手術を受け入れ、一か八かの復活に挑んだ。

 過酷なリハビリの末、トミー・ジョンは中1年の1976年に復帰。いきなり10勝を挙げてカムバック賞、ハッチ賞を受賞すると、翌年には20勝。その後も2度、20勝以上を挙げ、ついには46歳になる1989年までプレー。メジャー歴代26位の通算288勝を挙げ、歴代3位の実働26年を達成した。

 彼の成功があってこそ、現代でも“トミー・ジョン手術”は存在する。トミー・ジョンは歴史のトビラを開いた大投手だった。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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