【永田町炎上】官僚が描いた「政治劇」を演じる安倍首相と与野党議員 (2/2ページ)
■深夜の攻防──官僚たちの「質問取り」の実態
同じことは委員会質疑にも言える。日本の国会は米国に倣い「委員会中心主義」を採っているから、法律案にせよ予算案にせよ実質審査は委員会で行われる。反面、総理や閣僚は野党の執拗な質問攻勢に曝されることになるから、前もって官僚たちから念入りな「ご進講=レクチャー」を受け、かつ答弁原稿や付属資料に目を通して内容を咀嚼し、頭に叩き込んでおかないと、たちまち答弁に詰まり、とんだ大恥をかくことにもなりかねない。
閣僚たちが議場に答弁資料を持ち込み、熱心にラインマーカーを引いているのもそのためだ。2014年の9月の内閣改造で法相に抜擢されながら「うちわ問題」で失脚した松島みどりの後任の上川陽子などは初歩的な法律知識さえ持たない人物だから、答弁もしどろもどろになり、しばしば後ろに控えている法務官僚が耳打ちしたり、メモを差し入れたりして助け舟を出していたことなどは「官僚依存体質」の典型例であろう。
本会議にせよ委員会にせよ、国会質疑にはルールがある。質問者は前もって質問内容を「事前通告」しなければならない。だから質問者が決まると、さっそくその議員の事務所に押しかけ、あの手この手で、できるだけ質問内容を詳しく知ろうと偵察に入る。これを業界用語で「質問取り」と称している。まさに官僚と議員との深夜の攻防である。質問者の原稿も議員本人が作るとは限らない。芸能人やスポーツ選手あがりのように、目立ちたがりたいくせに、いったい何を質問したらいいのかわからないような者も少なくない。
では質問者の原稿は誰が作るのであろうか。これには──(1)自分の政策秘書が作る、(2)党の政務調査会のスタッフに頼む、(3)委員会に対応して衆参両院に置かれている調査局(参議院では「調査室」)の調査員に依頼する、(4)答弁する側の官僚が作る──などのケースが考えられる。(4)は与党議員に多いが、狡猾な官僚は前もって質問に立つ議員の資質などを十分に下調べしておき、その議員が自分では質問原稿を作る能力がないと見抜くや、「もしセンセイのほうにご異存がなければ、わたくしどものほうで質問原稿をご用意させていただいてもよろしいのですが?」などとすかさず好餌を投げてくる。
自分たちがやりたい政策をアピールする絶好の機会だし、答弁も楽である。質問する議員側も答弁する閣僚側も官僚の書いたシナリオによって「政治ドラマ」を演じる下手な「役者」だと言えよう。テレビに映る委員会質疑や総理の演説の裏側で、官僚が蠢いているのだ。
- 朝倉秀雄(あさくらひでお)
- ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中