新聞記者の「かまとと」が拉致問題の解決を遅らせる (1/2ページ)

デイリーNKジャパン

新聞記者の「かまとと」が拉致問題の解決を遅らせる

知っているのに知らないふりをすることを「かまとと」という。うぶに振舞う女性に対して使われることの多い言葉だが、最近では日本人拉致問題の記事を書く記者たちに、最も当てはまっているように思える。

北朝鮮は12日、日本が対北独自制裁を決めたことに反発し、拉致被害者などに関する包括的な調査を全面的に中止すると宣言。これを受け、主要各紙は社説で怒りの声を上げたが、私が目を通したものは一様に、ピントがズレていると言わざるを得ないものだった。

たとえば、朝日新聞の社説はこのように書いている。

「日本政府は、将来的な国交正常化と経済支援など、独自に持つカードをうまく使いながら、二国間協議の再開を今後も粘り強く探るべきだ」

これを書いた記者は本気で、日本が金正恩体制の北朝鮮と国交正常化したり、大規模な経済支援を行ったり出来ると思っているのだろうか。

北朝鮮に清算させるべき問題は、核・ミサイル開発と日本人拉致だけではない。それらと同じくらい、人権問題の重要度が増してきている。そして、北朝鮮の国家的な人権侵害を国連で告発し、国際的なイシューとしてきたのは他ならぬ日本政府だ。

そして、そうした経緯を知りつつ厳しく認識すべきなのは、金正恩氏が核やミサイルを放棄することはあり得ても、人権問題を進んで清算するなど考えられないという現実だ。

たとえば誰かが、正恩氏に「核もミサイルも放棄しろ。そうすれば100兆ドル払うから」と約束したとしよう。それが信じるに足ると正恩氏が判断すれば、そこで交渉はまとまるはずだ。それだけのカネがあれば、指導者の資質がどうあれ豊かな国作りができるし、核兵器抜きで強力な軍事力を備えられるのだから。

もっとも100兆ドルでは、世界のGDPの合計を上回ってしまう。そんなカネは誰も払えない。では、1兆ドル(約112兆円)ではどうか? やはり、北朝鮮にみすみすくれてやる物好きはいまい。大きく下げて10億ドル(1120億円)なら、「払ってやってもいい」という国はありそうだ。しかしその額では、北朝鮮が要求を飲むまい。では100億ドルなら? もしくは20年分割で1000億ドルなら……。

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