日景忠男をしのんで:ロマン優光連載52 (2/3ページ)
その素敵で美しい思い出は本当のことなのだろうか? 脳内でバイアスがかかって見せた勝手な幻想なのではないだろうか? 外野には、そう揶揄されるたぐいのものでしかないのだろう。一方の側だけが勝手に語ってるだけのものにすぎないからだ。しかし、それが幻想で真実ではないと言うこともできない。一方の側からしか語られてないということは、相手から否定されてはいないということでもあるからだ。客観的に第三者が見て「あからさまに嫌がっていたのに気づいてない」「あからさまに馬鹿にされているのに気づいてない」ということもあるだろう。そういう露骨な事態や相手からの発言がない以上、それは幻想なのか真実なのかは証明されることはない。男と女の関係の中でだって言える。容姿が劣ると見なされてる金持ちの年配の女性と付き合ってる若い美青年がいるならば、屈辱的に飼われている、あるいは打算的に利用していると思われがちだ。
しかし、そこに我々が窺い知ることのできない二人だけの情実があることだってあるだろう。人が人をどういう理由で好きになるかなんて、誰にも、ひょっとしたら本人ですらもわからないのだから。日景氏と沖氏の関係なんて二人にしかわからない。いや、結局のところ相手の自分に対する思いなんて本当にわかってるかどうかなんてわからないのだから、一人、一人が自分の真実しかわからないものだろう。色んな人がいる。色んな関係性がある。その中の好きの気持ちなんて、所詮は個人的な妄想なのかもしれない。日景氏は後年逮捕されたり、海外で買春をしたり、けして誉められるような綺麗な人物ではないのだけど、沖氏に対する思い、二人で過ごした時間への思いだけは、間違いなく美しいものだった。それだけはきっと日景氏の真実なのだろう。そう、それは確かに綺麗なものだった。
<隔週金曜連載>
写真:「真相・沖雅也」日景忠男・著 1984年ワニブックス刊(現在入手困難)
【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。