異未来SF「ネッ禁法時代」が面白い! 「カクヨム」レビューブログ出張投稿 (3/3ページ)
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健康保険証や住基カードなど、様々な身分証明書があるなかで、現代日本における最強の身分証明書といえば運転免許証であるということは多くの人に同意いただけると思います。
携帯電話を契約するときやインターネットカフェを利用するときなど、身分証明書をもとめられたときに運転免許証さえ出せばまず間違いはありません。
本作はそんな「運転免許」に、高度な情報技術の知識を必要とする「ネット免許」の資格をハイブリッドさせることで、自動運転技術というトレンドを取り入れつつ、人間のコンプレックスや身分関係を描く「資格」というテーマを、極上のエンターテイメントとしてしあげた見事な作品です。
こんな作品を無料で読めるなんてラッキーとしか言えない
高校生56人の命を奪ったバス事故で幕を開ける本作は、その黒幕を追うミステリーでありながら、コンプレックスを抱えたヒロインをめぐって仲間たちが繰り広げる青春活劇でもあり、今とは異なる未来を歩むもうひとつの日本で繰り広げられる異未来SFエンターテイメントでもあります。
そして、ネット免許が施行された東京という設定をめぐって本作が描くのは、自由を争って戦うようなSF的監視社会の物語ではありません。むしろ誰もが共感できる普遍的なテーマを描いています。
運転免許を持っていても人は交通事故を起こす。医師免許を持った人だって医療事故を起こす。しかし調理師免許を持った人が料理人になり、弁護士資格に合格したひとが弁護士の道を歩むように、どんなに不完全でも「資格」というものは人生を左右するひとつの重要なファクターです。
罪と罰、責任と自由、劣等感と優しさ、愛と憎悪──本作は様々な人間模様をその「資格」というテーマを通じて描き出します。
そのうえで、謎のハンドルネームを持つ登場人物、誰から届いたか分からないメール、散りばめられた様々な謎、見事に回収される巧みな伏線、軽妙なキャラクターの会話劇や、胸を熱くさせる熱狂的展開、後半には手に汗握るアクションや涙を禁じ得ない感動まで用意されていて、ほんとうに誰もが楽しめるミステリー&エンターテイメントになっています。
37万文字あるけど、37万文字ずっと面白いよ!!
いやね、確かにね、誤字とかあるかもしれません。うん、僕も見つけました。編集者の校正が入らないWeb小説だもの。
微妙な描写だってゼロじゃない。まだ誰の編集の手も入っていないんだもの。(同性愛者に関する記述で正直僕がひっかかったのも事実)
でも、そんなこと吹っ飛ばせるくらい、おもっしろい小説だからそんなことは大丈夫です。そんなことは、たぶんそのうち書籍化されて編集者さんがなんとかしてくれるでしょう。
僕はこの作品をお金を払って書籍でもう一度読めると信じていますから。無料で読めるなんて単純にラッキーです。