芸能人の”熊本支援”に優劣をつける愚かさ…求められる被災地への共感

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芸能人の”熊本支援”に優劣をつける愚かさ…求められる被災地への共感
芸能人の”熊本支援”に優劣をつける愚かさ…求められる被災地への共感

ぶっちゃけ僧侶の時事コラム

 熊本地震から、一ヶ月が過ぎようとしている。

 ゴールデンウィークには、休日を利用して需要をはるかに越える多くのボランティアが熊本に駆けつける報道を見て、5年前の東日本大震災以来、日本人は大きく変わったように感じる。日本人はもともと奉仕をする心は篤いのだが、いまいち行動に移せない人が多かったように思う。しかし、東日本大震災以来、その思いは「行動」へと変わったように思う。仏教には「利他行」という修行がある。自分を犠牲にして他人に利益を与えることこそが人間としての生き方であり、価値であると。「人を助けることは、自分自身を助けることに繋がる」と仏教では教える。

■地震大国”日本”に住んでいる意味

 私も先日、甚大が被害を受けた益城町を訪れ、微力ながらも瓦礫撤去のお手伝いをしてきた。重い瓦礫を運び出しながら思い出されるのは、5年前の東日本大震災。当時、東京都知事であった石原慎太郎氏が「無残な言葉に聞こえるかもしれませんが…」という前置きをしながら「これはやっぱり天罰だと思う」と発言されたことを思い出す。東日本大震災は日本に対する天罰であり、私達日本人が反省をしなければ犠牲になった人だって浮かばれない、との主旨のコメントをされた。当時は不謹慎な発言だと多くのバッシングを受けたが、今、瓦礫を運びながらあの言葉を振り返ると感慨深いものがある。

 東日本大震災をはじめ、今回の熊本地震など近年続き起こる自然災害によって失ったものはあまりにも大きい。しかし、全国各地から駆けつけるボランティアの姿を見ると、あれから日本人の生き方や考え方、心構えも変わったように思う。日本は「戦争」や「震災」など、大きな傷を被る度に、その傷口が治り強くなるが如く、技術と生き方を磨き上げてきた。南海トラフ地震が声高に叫ばれるなか、地震大国「日本」に住む私達は、それをどう受け入れ、生きて行くかが問われている。

 750年以上前の鎌倉時代、震災をきっかけに政治や日本人の生き方を問い正した僧侶がいた。鎌倉仏教の開祖のひとりである「日蓮」である。日蓮は「正嘉大地震」という大震災をきっかけに、日本の政治のあり方、仏教のあり方に疑問を抱き、数年をかけ仏教経典の研究を重ね、『立正安国論』という提言書にまとめ、当時の幕府の政権を司る執権に直訴した。「正しい生き方を立てることにより安らかなる国へと導く」という意味である。日蓮が39歳の時である。

 正嘉の大地震は、正嘉元年(1257)8月23日。午後7時~8時頃。鎌倉付近を震源域とする地震でマグニチュード7.0~7.5。震度6であったと推定される。当時、日本の中心であった鎌倉付近を強震が襲い、山崩れや家屋や神社仏閣は悉く崩壊し、余震も多数、日本の中心が大パニックとなった記録が残っている。そして、震災に追い打ちをかけるように、大飢饉や伝染病など続き起こり、多くの死者が出たという。「不吉」であるという理由から、わずか8年の間に5回も元号を変えていることが社会の混乱を物語っている。当時、鎌倉に庵を構えていた日蓮は、かろうじて命は助かったものの被災者の一人であり、目の前の惨劇に僧侶として日本の行く末を案じ、人々の心のあり方や政治のあり方を為政者に直訴した。残念乍らその提言書は無視され、為政者からは謀反者として後に多くの受難を被ることとなる。

■求められる被災地を思う”共感”

 ネットのなかでは、芸能人などの支援のあり方によって、讃えてみたり、中傷してみたりが繰り返されている。避難生活を余儀なくされている被災者から見れば、その中傷合戦こそが被災地を無視した迷惑な愚行であろう。被災地に赴いた人間として感じることは、支援のあり方に勝劣をつけてはいけないと断ずる。日蓮が訴える大切なこととは「共感」するということであろう。その被災地を思う「共感」が、ボランティア活動に行く、買い物のおつりを募金する、被災地の名産を買う、被災地の状況をSNSを拡散させるなど、共感が形へと表れていくものであり、勝劣をつけること事態大きな間違えなのである。「震災」という大きな試練を与えられた時こそ、私達の心の有り様が、まじまじと露呈する。今回の震災によって、無念にもお亡くなりになられた命を見つめる時、次に来るであろう震災に向け、自分自身の心と日頃の備えを整えておくことが求められる。

著者プロフィール

日蓮宗宗門史跡 名瀬 妙法寺 住職

久住謙昭

1976年横浜市出身。地元の中学卒業後、日蓮宗の総本山である身延山で6年間の僧堂生活(修行)を積み、平成8年に僧侶の資格を取得。立正大学大学院文学研究科修士課程修了。世界三大荒行堂といわれる日蓮宗大荒行堂を2度成満。横浜で700年以上の歴史を有する宗門史跡「妙法寺」の47代目の住職。一般社団法人「みんなの仏教」の代表理事。テレビ朝日「ぶっちゃけ寺」に出演。仏教の伝統や本質を守りながらも、現代社会に適応したお寺や仏教の姿を求め発信している。〝終活こそ僧侶の仕事〟をテーマに「僧侶がつくったエイジングノート」という終活ノートを出版、年間多くの公演活動を行っている。

公式サイト/日蓮宗宗門史跡 名瀬 妙法寺

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