田中角栄 日本が酔いしれた親分力(8)限られた時間を最大に活用 (3/3ページ)
大臣もどうぞ」
田中は、声が大きいから内緒話などできない。すべての話が筒抜けである。その場の端の席に座っている小長でも、聞き耳を立てていれば田中の会話は聞こえてくる。おかげで、この先田中が何をしようとしているのかを前もって知ることができる。しかも役所では聞いたことがないような話も聞こえてくる。そのため、小長は仲間たちにもその情報を流すことができたりした。
そうこうしている内に、次の宴席の開始時間が迫ってくる。
「申し訳ない」
そう言って田中は車に乗り、移動する。
宴席と宴席の間は、クライスラーを飛ばした。クライスラーは8気筒エンジンであり、新聞記者の乗っている日本製の4気筒エンジンの車ではとうてい追いつけない。しかも、信号が黄色でも、構わず無視して突っ走った。
作家:大下英治