吉田豪インタビュー企画:渡辺淳之介「BiSはスクールカーストの最下層系で一般ピープルの星」(1) (3/4ページ)
■なあなあの70点より緊張感のあるマイナス20点
──由芙さん加入後、BiSがネイキッドロフトで初めてトークイベントを開催したときボクが司会として呼ばれたんですけど、その時点でボクは渡辺さんに対する疑問がすでに出てきてたんですよ。渡辺さんがボクをブッキングした理由が「吉田さんの毒舌で彼女たちを潰してほしい」みたいなことで、でもボクはそういうキャラじゃないんですよ。
渡辺 ハハハハハ! そうでした(笑)。
──その発想も凶悪だと思ったし、BiSのメンバーと同じ控室に案内されたらメンバーが異常にピリピリしてて、みんな会話もせずひたすら携帯いじったり鏡を見たりしてる感じで、正直どうかと思ったんですよね。
渡辺 ピリピリでしたね。僕もピリピリしてたんですけど。あのときホントに仲が悪くて。そもそも僕、仲悪くさせるのすごく得意なんですよ。
──ダハハハハ! それは得意そうですよね(笑)。
渡辺 いろんなヤツにいろんなことを言って、ちょっとした心理戦みたいなのはじつはすごく得意なほうで。
──それって、なあなあな関係になるより緊張感がある関係にしたほうがいいって理由で、あえて仲悪くさせたりするわけですか?
渡辺 そうですね。なあなあでやって70点取りにいこうみたいな、赤点を取らなきゃいいやみたいな状況になるよりは、ピリピリして赤点取ったほうがまだおもしろい結果になるとは思ってますね。っていうのも僕が手掛けていたメンバーには正攻法で行ったら成功する才能がないので、才能がない人間がどう頑張っても80点は取れないんですよ。そうすると、むしろマイナス20点を取ったほうが人に感動を与えられるっていう、それだけですね。
──そうやって説明されると理解できるんですけどね。
渡辺 だから、そこが結構ぶつかったところだったんですね。それこそ寺嶋由芙にもずっと言われてたのが、「もっと練習をしてボイストレーニングをしてダンスのレッスンをすれば、こんなことしなくても武道館に行ける」ってことだったんですけど。
──一見、正しそうな意見ではあるんですけど、それだけじゃ武道館までは行けないですよね。もっと外に向けてアピール出来る何かがないと。
渡辺 そうなんですよね。だから完全に真っ向対立で。
──渡辺さんは外に向けて仕掛けたい人ですからね。
渡辺 はい。だから、そこまでは言えなかったですけど、練習なんかしたって無理だよみたいな、そういう感じだったんですよ。
──うわー! ……フォローすると、要は大きな事務所の選ばれたエリートみたいなアイドルと比べたら、どう考えたってポテンシャルが違うんだから、普通にやって勝負になるわけがないってことですよね。
渡辺 それをできないから、BiSっていうものに入ってしまって数奇な運命になってるわけで、もはやあきらめろって俺は思ってたんですけど、彼女にはその感じがなくて。リキッドルームとかでライブやって、ちょっとずつ大きくなってはいたし、全然ガラガラでしたけど両国国技館でやったりして、「ちゃんとやればできる」って、ちょっと勘違いしちゃうところがあったと思うんですよ。