田中角栄 日本が酔いしれた親分力(12)心遣いで金の価値を変える (1/2ページ)

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田中角栄 日本が酔いしれた親分力(12)心遣いで金の価値を変える

 1月6日、7日のサンクレメンテ会談が終わった後、佐藤総理ら代議士、新聞記者団を含めた全員が泊まっている宿舎に、ニクソン大統領はじめ、アメリカ政府の要人たちがやって来た。そこで記者たちは、田中と福田の違いをまざまざと見せつけられることとなる。

 田中系、福田系の1、2年生議員が、あわよくばニクソン大統領と握手でもしている写真を撮れれば、とニクソン大統領や閣僚たちの周りをうろうろしていた。彼らと握手している写真が撮れれば、次の自分の選挙に、この上なく役に立つ。後援会や地元の有力者に対しても、自分の株を上げることができる。

 福田は、アメリカ側の閣僚たちと和気あいあいの雰囲気で肩を叩き合い、「やあやあ」と言いながらも、自分だけがカメラに収まっている。

 ところが田中は違っていた。自分が面倒を見ている1、2年生議員を次々と、ロジャーズ国務長官やコナリー財務長官といった閣僚の元へ連れて行き、できもしない英語で紹介する。

「ハロ、ミスター・ロジャーズ! ヒー・イズ・ケイワ・オクダ!」

 そうして握手をさせると、その議員の秘書、あるいは自民党お抱えのカメラマンに、確実に写真を撮らせる。こまめに、子飼いの議員を入れかわり立ちかわり連れて行く田中の姿は、記者たちに強い印象を残した。

 それは、ニクソン大統領が私邸に佐藤以下を食事に招待した時にも続いた。

 ニクソン大統領の私邸での食事では、全員が1カ所に集まるスペースがない。テーブルはそれぞれが離れていて、1、2年生議員などはまったく蚊帳の外に置かれている。

 田中は、その議員たちをわざわざアメリカ側の閣僚たちが座っているテーブルに連れて行き、紹介し握手をさせた。そして、きちんと写真を撮らせた。それも、1人の閣僚とだけではなく、次々と連れ回した。

 同行した記者は唸った。

〈やはり、こういう真似は、叩きあげの苦労人じゃないと、とてもできない。だからこそみんな“この人のためにひと肌脱ごう!”と、本気になるんだな〉

 記者は、田中と福田の金の使い方の違いにも、改めて思いを馳せた。

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