田中角栄 日本が酔いしれた親分力(20)不退転の覚悟で交渉に臨む (1/2ページ)

アサ芸プラス

田中角栄 日本が酔いしれた親分力(20)不退転の覚悟で交渉に臨む

 9月26日、午後2時5分、迎賓館で第2回首脳会談が行われた。

 周は冒頭、切り出した。

「外相会談における高島局長の発言は問題だ。日中国交正常化は、政治問題だ。法律論で処理しようとする人物を中国では法匪という。高島局長は法匪だ。あの人のいる限り、まとまる話もまとまらない」

 田中は、色をなした。

「彼は私の忠実な部下だ。私の意を体して言っているのに、法匪とは何事だ! 彼は、条約上の条文解釈はこうだ、という発言をしただけだ」

 周は、前日の田中の挨拶についても指摘した。

「昨日の夕食会で、あなたは『多大のご迷惑をおかけした』と言った。が、それは中国では、家の前の道路に水を打っている時、たまたま通りかかった女性のスカートにその水をかけてしまった場合に詫びる程度の言葉だ」

 つまり、日中両国の過去に対するお詫びとしては納得できないというのだ。

 田中は、苦虫を噛みつぶしたような表情になった。

 周は、さらに続けた。

「日本は、わが国を長い間侵略した。国民は日本の軍隊によって蹂躙された」

 田中は、言い返した。

「隣同士で息子と娘を結婚させようという時、相手の家の悪口ばかり言ってもしようがない。結婚する2人の将来のためにこれからどうやっていくか、ということを前向きに話し合わないといけないのではないか」

 が、周はなおも執拗に日本を批判した。

 田中は、眉間に皺を寄せた。

「そんな過去の話ばかりしに来たわけではない。明日からどういう歴史を切り拓いていくか、ということを話し合いに来たのだ。過去の話をしたらきりがない」

 田中は続けた。

「あんた方だって、日本を侵略しようとしたじゃないか」

 座は、水を打ったように静まり返った。

 田中は冗談めかして言った。

「1200年代、2度にわたって元冠があった。風が吹いて上陸はしなかったけど、明らかに侵略の意図があった」

 周は笑みを浮かべた。

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