田中角栄 日本が酔いしれた親分力(21)体当たりで達成した大仕事 (2/2ページ)
このままにしておきましょうよ」
田中らは上海に着き、午後7時、上海工業展覧館で、張春橋主任主催の歓迎夕食会が開かれた。
この最後の夜は、田中も大平も、さすがに緊張の糸がゆるんだのであろう。乾杯に次ぐ乾杯で、ついにマオタイ酒が飲めなくなるほどに飲んでしまった。乾杯ゆえ、薄めずにストレートで飲まなくてはならない。
田中は音をあげ、大平に言った。
「総理代行で、乾杯してくれ」
この日の夜遅く、台湾の国民政府は外交部声明を発表、対日断交を宣言した。
9月30日午前9時半、田中らは、日航特別機で上海空港を出発して、帰国の途についた。それから1時間ほどした時、大平が田中に言った。
「おい、生きて帰れたなあ‥‥」
田中も、しみじみと言った。
「生きて帰れるから、日本の土も踏めるのさ」
作家:大下英治