作家が小説で「不倫」を描く理由 「いけないと分かっていてもおちる恋もある」 (2/4ページ)
――男女が好き合うという形は変わりませんよね。
村山:そうですね。抑えていてもおちてしまうのが恋愛ですから。自分だけはそんな恋愛はしないと思っていても、好きになってしまったら踏み外すことはあり得ます。むしろ自分だけは大丈夫と思っている人の方が危ういかもしれません。
――村山さんにとっての転換点となった『ダブル・ファンタジー』を読んだときはこんなにドロドロした小説を書くんだ!と驚きました。賛否両論もあったと思います。村山:『ダブル・ファンタジー』は人間の根源的な部分に迫るものを書きたいと思ってチャレンジした作品でした。だから、賛否両論が生まれることは覚悟の上でしたし、あれだけの裏切りのような転身をして「素晴らしい転身です!」と言われても、作家的に気分が良いかと言われるとそうではないですよね(笑)。
――もともとデビュー前にはそういった作風の小説を書かれていたんですよね。村山:暗い部分のあるサスペンスっぽい小説でしたが、本当に習作でした。未熟ではありますけど、裏切りや秘密の隠匿をテーマに書いていました。
――村山さんとしては、そちらのほうがご自身に近いのですか?村山:近い遠いはなくて、両方自分自身ですね。『天使の卵』のような世界観は嘘なのかと言われれば、そうではありません。今でもあの世界を希求する気持ちはあります。
『ダブル・ファンタジー』や『放蕩記』を出して、作風によって「黒村山」「白村山」と分けられることもありますし、私自身もそれに乗って話すことはありますが、白と黒が自分の中ではっきりと分かれているかというとそうではないんです。
どちらも自分であり、月の表側と裏側のような関係にも似ています。見えなくてもその半分があって初めて球体になる。
■村山さんが影響を受けた3冊の本とは? ――村山さんの小説を執筆するモチベーションはどこにあるのでしょうか。村山:私にとって、続けられるものが小説を書くことだけだから、というのが一番近いかもしれません。他のことは興味を持ってはじめても続かなかったけれど、小説だけは23年間ずっと続けてくることができました。
もう一つ、子どもの頃から厳しい母が唯一認めてくれていたのが文章だったんです。