作家が小説で「不倫」を描く理由 「いけないと分かっていてもおちる恋もある」 (3/4ページ)

新刊JP

そのおかげで、ふだんどんなに否定されたとしても、書くことに関してだけは、私自身も自分を認めてやれた。その想いを今も引きずっているところはありますね。その唯一を他人に奪われたくないという気持ちがありますし、文章で世に出て、この仕事を続けさせてもらって、今がある。

今は求められて小説を書ける立場にあって、それはすごく恵まれていることだと思います。だから、村山由佳の小説を期待してくれる方々の想いに応えるような作品を書かないといけないという、ある意味職人的な気持ちがありますね。

――『天使の卵』で作家デビューしてから23年、小説家として書きたいものは変わってきましたか?

村山:行き着きたい場所は変わらないと思います。ただ、同じ山を登るにしても足場の悪い、険しい道を選んだり、登頂したときに達成感がある方を選ぶようになったという変化はありますね。

根源的なテーマは「それでも人は生きていかなければならない」というところにあって、それが晴れやかな形で提示できるときもあれば、そうではないときもあります。でも行き着く場所は同じ。それが私にとって小説を書くという行為なんだろうと思います。

――では最後に、村山さんご自身が影響を受けた3冊の本をご紹介いただけないでしょうか。

村山:一冊目は『ごんぎつね』です。「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」と兵十が気付いた瞬間に、ごんは死んでしまう。人と人はこんなにも分かりあえないものなのかということを、最初に私に叩き込んでくれたのがこの作品でした。

だから『天使の卵』は、私にとっての『ごんぎつね』のようなところがあります。まさに原点ともいえる本ですね。

二冊目はジョン・スタインベックの『ハツカネズミと人間』です。これも悲惨な、理不尽な物語ですね。初めて読んだのは小学校5年生のときで、分からないことがたくさんあったんです。

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