作家が小説で「不倫」を描く理由 「いけないと分かっていてもおちる恋もある」 (4/4ページ)
ただ歳を重ねて、人生経験を増やすごとに理解できる幅が広がっていき、「人は自分の経験で小説を翻訳して読む」「経験値が増えると物語を深く読めるようになる」ということに気付かされました。実体験をともなわない限り、読書だけでは人は成熟しないというところですね。
三冊目は佐藤愛子さんの『戦いすんで日が暮れて』という、私が生まれて間もなくに直木賞を受賞した古い作品です。
愛子先生の体験がベースになっているのですが、別れた旦那さんの借金を本来なら背負わなくてもいいのに、「私が返します!でも今は一銭もお金がない。返してほしければ働く私の邪魔をしないで!」と言って借金取りたちを追い返す。しかも結局は借金をきっちり返してしまう。
すでに90歳を超えられていますが、2年ほど前に『晩鐘』という、『戦いすんで日が暮れて』から連なる長編小説を書かれています。愛子先生の作品は、女性が一人で物書きをして筆一本で生きていくことの壮絶さが胸に迫ってきます。私自身、励みになりましたね。
■取材後期個人的に、女性の作家さんにお話をうかがうときは、普段とは違った緊張感を持ってのぞむのですが、村山さんはどんな質問にも丁寧に答えてくれました。ありがとうございます。さて、この『ラヴィアン・ローズ』は女性視点で進んでいくサスペンスですが、男性の視点で読み進めていくと、女性の「怖ろしさ」に震えてしまうかもしれません。そのくらい衝撃の走る小説です。インタビュー中には、また『天使の卵』のような小説も書きたいとおっしゃっていた村山さん。次回作にも期待です。(新刊JP編集部/金井元貴)
■村山由佳さんプロフィール1964年東京都生まれ。立教大学卒業。会社勤務などを経て、1993年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。2009年『ダブル・ファンタジー』で柴田錬三郎賞、中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞を受賞。その他の著書に、母との葛藤に正面から向き合った自伝的小説『放蕩記』、累計200万部を超える「天使」シリーズの最終章『天使の柩』、かけがえのない存在との出会いと別れを香りとともに描く小説集『ワンダフル・ワールド』などがある。(書籍より引用)