北朝鮮で老若男女が「薬物ビジネス」に手を染める理由 (1/2ページ)

デイリーNKジャパン

北朝鮮で老若男女が「薬物ビジネス」に手を染める理由

北朝鮮は不思議な社会で、表向きは社会主義であるが、実情は庶民の爪の先まで資本主義が染みわたっている。忠誠を誓うだけで衣食住を保障してくれるはずだった党と指導者は、その責任を20年以上前に放棄した。100万人以上の餓死者を出し「苦難の行軍」と呼ばれた90年代中盤の大経済難の時代から、北朝鮮の庶民を食べさせてきたのは「商売」だった。

中学生と親が一緒に

鍋釜をトウモロコシと交換する原始的な物々交換からはじまり、農村への買い付けに行き市場で売るといった初歩的な商売、オートバイを利用した「輪タク」、そして中国からの密輸にいたるまで、あらゆる商売が庶民の生活を支えた。国家によるサービス供給が崩壊しているので需要も高く、庶民の経済網はわずか十数年で北朝鮮全土をおおうまでになった。

そしてその過程で、商売はしだいにシステム化してきた。特に流通面の進化が著しい。買い付けた品物を軒先に並べていただけだったものが、仲介業者が生まれ、品物を配達してくれるようになった。お金さえあれば電話一本で、韓国のテレビで宣伝している品物を北朝鮮まで取り寄せられるまでになった。

皮肉なことに、こうしたシステム化のあおりを庶民が受けている。今や「トンジュ(金主)」と呼ばれる10万ドル以上の大きな資本を動かす商売人が「おいしい商売」や「流通」を独占することとなった。日銭を稼ぐ庶民に残されたのは、実入りの少ない商売ばかりだ。デイリーNKの記者たちも「一種類の商売では食べていけない」という声をよく耳にしている。カネがカネを生む資本主義は、北朝鮮でも例外ではない。

そんな状況の中で、現金をガッポリ稼ぎたい庶民の最後のより所となっている商売が「麻薬の密売」だ。北朝鮮で麻薬といえば「ヒロポン」、つまりは化学的に合成されたメタンフェタミンを指す。「オルム(氷)」や「ピンドゥ(氷毒)」といった隠語でも呼ばれ、金持ちから庶民、老若男女に蔓延している。

値段は末端価格で1グラム100元(約1500円)から120元(約1800円)。1グラムを10回から20回に分けて吸引する。2000年代に入り、「オルム」は庶民のあいだで急速に広まった。

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