【新東方見聞録】三蔵法師の「旅の目的」に出会う(中国・西安) (1/2ページ)
西遊記に出てくる三蔵法師様は、日本人なら誰しもが知っているキャラクターです。
この三蔵法師様は、実在の人物です。もちろん猿と豚と河童をお供にしていたという部分はフィクションですが、それでも実際に中国から天竺、すなわちインドを往復したというのは歴史的事実。
では、何のために?
このあたり、意外と日本人には知られていません。三蔵法師様は、なぜわざわざ遥か彼方のインドへ旅をしていたのでしょうか。もちろん、牛魔王を倒すためではありません。
この記事では、「三蔵法師様の歴史的役割」について書きたいと思います。
・壮大な旅の目的
西遊記の三蔵法師様は、その旅の目的を「インドでありがたいお経をもらいに行く」としていました。
史実の三蔵法師様の場合は、それとは少し違います。「お経をもらいに行く」というのは確かに正解なのですが、その先があります。それはサンスクリット語で書かれたお経の翻訳事業です。
当時の中国にも漢訳のお経はありました。ですがそれは不正確ではないかという指摘があり、その是正のために三蔵法師様が立ち上がったというわけです。
経典原本の翻訳は、どの宗教でも非常に重要な作業。キリスト教の場合は、長らくカトリック教会が聖書の翻訳権を独占してきました。それに反抗したのがマルティン・ルターという人物で、彼の設立したルター教団はカトリック側からプロテスタント(抗議者)と呼ばれることになります。
仏教ではそうした組織的な縛りはあまりないのですが、それでも経典翻訳には莫大な労力を費やす必要がありました。