世界のラグビーを語る。~コーチの目・栗原徹編~ (2/4ページ)
(笑)
――そのフランスに、五郎丸選手が移籍しました。
ホントに羨ましいですよね。五郎丸は行っただけじゃなく、実際に試合に出ましたからね。もちろん、試合にずっと出られているわけじゃないし、本人がどんな気持ちでいるかは分からないけれど、やっていることは100%正しいと思う。あの環境にいることがどれだけ大変なことか。そりゃあ、以前の人たちに比べたらサポートが分厚いように見えるかもしれないけれど、いつでもサポートしてもらえるわけじゃないし、ピッチの中では実力勝負しかない。今は思い通りにいかないこともあるだろうけれど、それも含めてものすごく良い経験になるはずです。僕からしたら、それさえも羨ましいです(笑)。
しかも、今のTOP14は、リーグ全体がすごく面白くなっている。上位チームはどこも独自のチームカラーを持っている。その中で、ラシン92なんて、たった1年で完全にダン・カーターのチームになるような、フレキシブルなところもある。フランスのラグビー自体、何かひとつのことを徹底すると言うよりは、いろんなアイデアを持っているスタイルだし、選手にとってもコーチにとってもすごく勉強になると思います。
――シックス・ネーションズはどうご覧になっていますか。
堅いゲーム運びが多いですよね。良いラグビーをするよりも、勝つラグビーをするという意志を強く感じる試合が多い。言い換えると、『自分がやりたいプレー』よりも『チームを勝たせるプレー』を優先する。
僕自身、コーチになってからは、『勝つためにどんなプレーを選択するか』というミーティングでシックス・ネーションズの映像を使うことが多いんです。たとえばアイルランドのSO(スタンドオフ)ジョナサン・セクストンなんて、足が速いわけでも、ステップやランニングスキルが高いわけでもないけれど、パス、キックの基礎スキルが高くて、デシジョンメークが素晴らしい。セクストンがパスを受ける直前でビデオを止めて『ここから何をするだろう?」と若いSOに考えさせる。すると、彼らの予想と違うプレーを選択していることが多いんです。それは実際に対戦している相手にとってもそうなんでしょうね。だから相手ディフェンスは対応できない。抜けていくわけです。