元マイクロソフト役員が警鐘 「働き方改革」に潜む落とし穴 (3/4ページ)

新刊JP

働き方改革じたいを目的にしてしまうと、人事制度労務制度の整備に走ってしまいがちで、育児・介護休業制度や在宅勤務制度を整備したものの、ほとんど活用されないというケースは少なくありません。

本来めざすべきは、企業の成長と、働く個人の成果と幸せです。これらの目的に達するために、手段としての働き方改革を進めましょうと考えるべきなのです。これは、特定の部門のみが進めるのではなく、経営課題としてトップと社員が「腹落ち」をして進めるべきだと考えています。

――では、本来の意味での働き方改革を実現させるうえでのポイントは何ですか。

越川:私はこれまで日本企業200社以上の働き方改革を見てきました。

そのような活動をとおして真の働き方改革を実現する上で必要なのは、現場に自由と責任を与える「経営者トップの覚悟」と、生産性を上げて成果を残し自身の幸せを実現しようとする「社員個人の意識変革」だと思います。

――本書では、日本マイクロソフトで実施された働き方改革についても紹介されています。越川さんの在籍当時、どのようにして改革を進めていったのですか。

越川:まだ働き方改革が浸透していなかった6年前、役員の一部は改革に懐疑的でした。

「リーダーたるもの、現場を見てまわって、ひとり一人の社員を鼓舞しなければ」という思いがあったため、テレワークを許可して目の前に社員がいなければ「鼓舞のしようがないじゃないか」という感じだったんです。

ただ、東日本大震災などの大規模な自然災害を経験し、またビジネスのさらなる成長を求められたとき、会社を挙げた生産性向上が必須となり、当時社長であった樋口を中心に、まず意識変革、新しい文化の醸成に注力したのです。

トップ自らが明確なビジョンを示し、社員満足度の向上、クラウドビジネスへのシフトなど具体的な改善項目をコミットすることで、社員の意識は徐々に変わり、全社員がテレワークに挑戦し、変化に挑戦していくという姿勢が浸透していきました。

――樋口さんにしてみれば、経営改革が働き方改革を生み出したという感じだったのかもしれませんね。

越川:おっしゃるとおりです。

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