「石の上にも三年」は本当か 元マイクロソフト役員の回答 (2/4ページ)
――会社を立ちあげて、そのようなワークスタイルに移行なさったのも、シリコンバレーでの経験が大きかったのでしょうか。
越川:それもありますが、いちばんのきっかけは、日本マイクロソフトに入社するまえに自分でベンチャーを興した際、働きすぎて十二指腸潰瘍になってしまったことです。
この経験を通じて、働きすぎが原因で体調を崩してしまったり、生死にかかわるようなことになってしまっては、ぜったいに良くないと痛感しました。
――いまのお話をうかがっても、働き方改革を実現できるかどうかは、つくづく経営者の覚悟しだいという気がしてきます。越川:そうですね。さらに、これは働き方改革というよりももっと広く、イノベーション全般にかかわる話かもしれませんが、ある組織がどのようにして物事を決め進めていくかという組織文化も成否をわける重要な要素だと考えています。
たとえばアメリカ企業では、トップの意向がどうであろうと、現場レベルで「まず、やってしまう」ことが珍しくありません。やってみて、レビューして、結果が思わしくなければ、修正したり止めたり…といった判断を重ねていくのです。この進め方だと、失敗して学ぶことは多い。ただ、やって失敗するより、やらないことのほうがリスクが大きいと考えています。
それに対し、典型的な日本企業では、何か新たな取り組みをやろうとしても、根まわしもふくめて実行するまでに膨大な時間をかけます。しかし、膨大な時間をかけるわりには、いざ実行したあとに「どんな結果が得られたか」のレビューが不十分という印象です。その結果、ムダなことを延々とつづけてしまうことがあります。
つまり、両者の決定的な違いは、リスクをどこで取るかです。納得いくまで情報を集めて全員で納得し意思決定の段階でリスクを最小化するのか、まず行動を起こしてその後に軌道修正しながらリスクを少なくしていくのか。スピードが求められる現在では後者の方が競争に勝てるのです。
日本企業がこのスピード感を実現するためには、現場での意思決定プロセスを簡素化し、役員も含めてその進捗と失敗の理由を「振り返る」という文化を醸成していく必要があると感じています。