ルパン一味の家紋も制作!? 家紋の歴史を絶やさない…紋章上絵師・波戸場承龍さんインタビュー

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ルパン一味の家紋も制作!? 家紋の歴史を絶やさない…紋章上絵師・波戸場承龍さんインタビュー

皆さんは、ご自身の家紋をご存知でしょうか? では、紋付袴をお持ちの方は? そもそも、自分の家紋が入った着物って、どうすれば手に入るのでしょうか? そんな家紋と着物に関する疑問を解決すべく、現在、ギャラリー「CAPSULE」(東京都世田谷区)で個展を開催されている紋章上絵師(もんしょううわえし)の波戸場承龍(はとば・しょうりゅう)さんを訪ね、お話をうかがいました。

個展会場に入り最初に目に飛び込んでくるのは、ボックスティッシュで築かれた黄金のピラミッド。家紋とどんな関係が⁉

−−こんにちは。早速ですが、波戸場さんのご職業である「紋章上絵師」とは、どんなお仕事なのでしょうか?

「黒紋付や留袖などの着物に、墨と筆を使い家紋を手描きで入れる仕事です。問屋や呉服屋を通して仕事をする事が多いため、表に出ない職業で、存在を知らない人がほとんどだと思います。この仕事が出来たのは、武士が裃に紋を入れる様になった頃です。おそらく室町中期のことでしょう。

江戸時代に入り、庶民も家紋を持つようになり町の上絵師が生まれ、自由な発想で新しい家紋を作りました。今では、家紋の種類は5万はあると考えています。現在の上絵師は加工がメインで、新しくデザインする人はいなくなりました」

ボックスティッシュ(クリネックス「極」)のピラミッドから、ひょっこり顔をのぞかせるお茶目な波戸場さん。パッケージに使用されているロゴは波戸場さんがデザインしたもの。

−−なるほど。家紋は、そうやって江戸時代に紋章上絵師さんたちの手によって多様に展開していったわけですね。しかし5万種類とは驚きです。
波戸場さんは、今や数少ない家紋のデザインもされる上絵師ということですが、ご自身が設立された「京源」という会社では、どんなお仕事をされているのでしょう?

「京源という社名は、もともとは祖父が使っていた屋号なんです。2000年から日本橋の浜町で和服全般の加工を請け負う会社を経営していましたが、2010年に稲荷町に工房を構えて、社名を京源に変更しました。

そして社名変更後、徐々に加工業からデザインの仕事にシフトしていったんです。きっかけは、企業さまのロゴデザインの制作。上絵師ならではの知識を活かしつつ、新しい考え方でデザインを始めました。

「誂処 京源」のウェブサイト 

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江戸時代、家紋は人々にとって身近な物でした。身の周りの物に家紋を施すことは日常的なことでしたが、現代は家紋への意識は薄れ、知らない人も多いです。千年の歴史ある日本の文化を絶やしたくない、という思いから、日常の物に家紋を落とし込むことをしています。例えば、グラス屏風などですね。

また2000年から、私自身も着物を着始めるようになりまして、2015年の秋より、本格的にユナイテッドアローズで男着物の展開を始めました。どんなことでも、依頼があればお受けするスタンスで仕事をしています。なんでも言ってください!」

--京源さんのお仕事で、具体的な事例をうかがってもよろしいでしょうか?

「皆さんの目に触れる機会が多いものですと、COREDO室町(商業施設)のロゴでしょうか。COREDO室町、COREDO室町2、COREDO室町3、それぞれの紋をデザインさせていただきました。それから、クリネックスのティッシュペーパー「極」のロゴ。イベントでは、東京江戸ウィークやアートアクアリウムのロゴをデザインさせていただいてます」


--COREDO室町のあの暖簾の紋が、波戸場さんのお仕事だったとは! この黄金のボックスティッシュも、家紋のデザインが加わることで、品質へのこだわりや高級感が伝わってきます。どのお仕事も和のイメージが強いですが、波戸場さんに家紋の制作を依頼される方というのも、やはり伝統芸能に携わっていらっしゃる方なんでしょうか?

「伝統芸能に携わる方に限りません。お母さんから息子さんにというケースもありますし、歌手の方、デザイナー、企業の社長さんから、個人の紋をご依頼いただくこともあります。最近ではフランス・イギリス・オーストラリア・香港・スペインの紋章を持っている方が結婚式で黒紋付を着られるのに当たって、作らせていただいたり。様々な方からの依頼がありますよ」

--最近は、どんな方の家紋をデザインされたんですか?

「落語家の春風亭一之輔さんの新しい紋です。ご本名を川上隼一(かわかみとしかず)さんとおっしゃるので、隼(ハヤブサ)の紋にしようと考えました。もともと使われていらっしゃったのが中陰光琳蔦で、中陰光琳繋がりで、鶴の紋があります。それを隼でデザインしました。隼は嘴に特徴があるので、わかりやすい形に整いました。それから一之輔さんにちなんで、漢字の「一」を忍ばせて。

春風亭一之輔 家紋披露落語会「一之輔どんな紋だい」チラシ。一之輔さんの新しい紋の全容は3月15日の落語会で発表される。当日は承龍さんとの対談も予定。
画像提供:SUNDAY

紋はシンプルな形の中に沢山の意味が込められています。江戸時代、判じ絵が流行しましたが、粋な謎かけも、紋をデザインする上で大事な要素になります」

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−−図案の意味や制作のコンセプトがわかると、がぜん面白いですね! 他にも有名人の家紋をデザインされていらっしゃるんですか?

「有名人といえば、ルパン三世とその仲間たちの紋をデザインしました」

−−え、あのルパン三世ですか!?

「ルパン一味の紋は、昨年『各キャラクターを漢字で』との依頼で作らせていただきました。今年はルパン三世50周年の年で、バージョンアップさせました」

−−この缶バッチがそれですね?

SETAN×ルパン三世 オリジナル家紋缶バッジスペシャルエディション。伊勢丹新宿店にて2月22日〜27日に開催された催事「ISETAN×ルパン三世 #伊勢丹のアジトに潜入せよ」で販売された『ルパン三世』誕生50周年記念のグッズ。

「はい。ルパンは宝袋の紐がネクタイ。次元はボルサリーノとマグナム。五右衛門は外枠を「川」、中に「石」で「石川」です。市川海老蔵さんが、ドラマで石川五右衛門を演じられましたが、市川家の家紋の三枡にも掛けています。不二子は藤の花で蝶、胴体が口紅、中央に峰の字を置きました。銭形は輪が十手、旭日章に「銭」です」

−−ファンにはたまらない演出ですね。こういうお話を聞いていると、伝統的な家紋の成り立ちにも興味がわいてきます。
以前、テレビ番組「デザインあ」(NHK)に出演されたとき、波戸場さんは筆を使用して、精緻な幾何学形態を描いていらっしゃいました。非常に柔軟な発想でデザインのお仕事をされていらっしゃいますが、技術面でも、現代的な要素を取り入れていらっしゃるのでしょうか。

「上絵師の仕事は、分廻し(竹製コンパス)と筆と溝引きを持ち、定規の溝に滑らせ直線を引いて描きます。現在は『KAMON-KOMON』『紋鑑』を手描きで作っています。「紋鑑」とは家紋の雛形で、紋付を作る際に見本で業者に渡すものです。

それと併行して、時代の需要に応える形で、現在はデジタルデータでの納品も行なっています。社名変更後、Macを導入して、AdobeのIllustrator(描画用ソフト)で、家紋を描き始めました。紋は線対称・回転対称なのでパソコンと相性が良いんです。また、家紋加工の新しい試みとして、スワロフスキーのクリスタルで家紋を施すといったことも行なっています。

昔ながらの紋章上絵師の道具。左から、溝引き定規、溝引き棒、筆、分廻し、墨と硯。画像提供:京源

−−なるほど。時代に即した家紋の展開ですね。現代の日本人の日常生活においては馴染みの薄くなってしまった家紋ですが、先ほどご紹介いただいたお仕事の数々を拝見していると、私たちは家紋の付いているものに、自ずと伝統や格式のイメージを持つようです。今後、家紋は私たちにとってどのようなものになっていくと思われますか?

「家紋は堅苦しいと思われがちですが、非常に自由度の高い面白いものなんです。江戸時代、庶民が家紋を持つ時、好きな役者の家紋を使ったということもあったそうです。当時の上絵師はデザイナーでもあり、多くの家紋を作り出しました。日本は西洋のように家紋を登録する制度はありませんから、多少の制限はありますが、今日からこれを家紋にすると宣言すれば、成立するものなんです。もちろん、本来は代々受け継ぐことが重要ですが」

−−贔屓の役者の家紋を? そんなミーハーな理由でも良かったとは。

「これからは個の時代、個人のアイデンティティーを表す紋を持たれる事をお勧めいたします。私は、これを『美章mishirushi』と命名しました。

家紋のほとんどは『円』で構成されています。『円』とは『縁』であり『宴』であり『苑』であり、そして『和(輪)』でもあります。すなわち『家紋』とは、日本人の家族に対する『やまとごころ』が象徴化されたグラフィズムなのです。

守るだけでは廃れてしまいかねない伝統の本来の価値を、柔軟な解釈と発想で再定義し、日本が誇る文化である家紋を世界に発信して行きたいと日々精進しています」

個展会場にて、5枚のパネルを繋ぎ合わせ、1万3千鋲を打ち込んで表現した五大家紋パネルの前に立つ波戸場承龍さん。

−−家紋は、過去の時代につくられた決まりきった図案ばかりだと思っていましたが、波戸場さんのお仕事はとてもクリエイティブですね。自分という人間を表す紋はどんな紋なのか、すごく興味が湧いてきました! 本日は貴重なお時間をありがとうございました。

取材・文=松崎 未來
協力=CAPSULE

■誂処 京源■
www.kyo-gen.com/

■展覧会情報■
波戸場承龍 “MONDAY”

会期:2017年2月25日(土)〜3月19日(日)の土・日曜日
時間:12:00〜19:00
休廊日:月〜金曜日
会場:CAPSULE
東京都世田谷区池尻2-7-12 B1F
03-6413-8055

capsule-gallery.jp

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