【高校野球】高校野球での敬遠は是か非か? 早稲田実対秀岳館戦の敬遠騒動を考えてみる (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■松井秀喜への5打席連続敬遠

 しかし、高校野球となると事情は少し違ってくる。

 その最たる例が、1992年、夏の甲子園で起こった星稜の松井秀喜(元ヤンキースほか)に対する5打席連続敬遠だろう。

 明徳義塾の馬淵史郎監督が勝利のためにとった非情、かつ苦肉の策が「5打席連続敬遠」だったのだが、狙い通り星稜を下した明徳義塾は高校野球ファンから非難され、脅迫まで受けることに。世間を騒がせる大事件となった。

 馬淵監督は後年、こう述べている。

「松井君と勝負していたら、間違いなく打たれて負けていた。高校生のなかにプロが1人混じっている。そんな飛びぬけた選手だった」

 松井はこの件に関して多くを語っていないが、甲子園という晴れ舞台で相手投手に正々堂々勝負して欲しかった、というのが本音だろう。

 ただ、松井がそれだけの強打者であり、勝負さえしてもらえないほどの実力を備えていた証が、あの5打席連続敬遠だった。

■悔し涙を流した雪山の思いを汲んで欲しかった

 今回、敬遠された雪山は試合後、悔し涙を流したという。松井に対しての敬遠とは意味合いが違っていた。

 早稲田実にとって今回の試合は招待試合であり、いわば練習試合の一環でしかない。公式戦ではないことは百も承知だ。

 しかし、グラウンドに立つ選手にとってはどうだろうか?

 選手たちは厳しい練習に耐え、熾烈なレギュラー争いを繰り広げている。たかが練習試合でも、1打席1打席、1球1球が真剣勝負だ。

 その真剣勝負の場を奪われた雪山の気持ちを、鍛治舎監督が汲んでいたのかどうか……。雪山が自分は強打者として敬遠されたのではなく、戦いの場から故意に外されたという忸怩たる思いにかられたのは想像に難くない。

 これまで名指導者としての経験を持って秀岳館ナインを指導し、巧みな采配で結果を出してきた鍛治舎監督だが、今回はその采配が仇となってしまったのかもしれない。

 雪山には「これも野球」と割り切って、悔しさを糧にさらなる成長を遂げてほしい。この借りはバットで返すしかない。

まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。
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