世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第225回 生産性向上こそが解である (1/3ページ)

週刊実話

 筆者は日本の人手不足を補う手段としての移民(外国人労働者)受け入れに猛反対している。移民反対を主張すると、即座に、
 「ならば、人手不足はどうするんだ!」
 と反論されるわけだが、答えは決まっている。生産性向上である。

 生産性とは、生産者1人当たりの生産を意味する。生産性向上とは生産者1人当たりの生産量を拡大し続けることだ。
 そもそも移民受け入れ論者が理解していないのは、経済成長は「人口(移民含む)の増加」ではなく「生産性向上」により起きるという真実だ。厳密には、総需要(名目GDP)が供給能力(潜在GDP)に対して過剰となり、インフレギャップ(≒人手不足)が発生。インフレギャップを人手を増やすのではなく、生産性向上で埋めようとしたとき、初めて経済成長の黄金循環が回り始める。
 インフレギャップを「人手」ではなく生産性の向上で埋める。生産性向上とは、生産者1人当たりの生産の拡大だ。

 GDP三面等価の原則により、生産=支出=所得となる。生産性向上で生産者1人当たりの生産が拡大するとは、生産者1人当たりの「所得」が増えることをも意味するのだ。すなわち、実質賃金の上昇である。
 実質賃金が上昇し豊かになった国民は、おカネを使い始める。すると、民間最終消費支出(いわゆる個人消費)や住宅投資といった需要が拡大し、経済は再度インフレギャップ化してしまう。というわけで、新たなインフレギャップを生産性向上で埋めると、またもや実質賃金が上昇。豊かになった国民が消費や投資を増やし、再びインフレギャップが拡大する。と、生産性向上と総需要の拡大が循環的に繰り返されるのが「経済成長」なのだ。

 数年前までのわが国は経済が完全にデフレ化していた。デフレギャップという総需要の不足が発生していたのである。デフレギャップがある国では生産性向上は起きない。生産性が向上したとしても失業が増えるだけで、むしろデフレが深刻化しかねない。
 とはいえ、現在の日本は異なる。経済はいまだにデフレから脱却していないが、幸運なことに、少子高齢化に端を発した生産年齢人口対総人口比率の低下により人手不足が始まっているのだ。この人手不足を移民受け入れではなく、生産性向上で埋めて初めて、わが国の経済成長の黄金循環が回り始める。

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