世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第226回 プライマリーバランス目標と経路依存性 (2/3ページ)

週刊実話

いわゆる、認知的不協和に陥ってしまうわけである。

 もっとも、最近はPB黒字化目標のナンセンスさが知れ渡りつつあるため、
 「とにもかくにも、PB黒字化するしかない」
 といった理論なしの「経路最優先」の発言が、財務省派の要人から聞こえ始めている。自民党の緊縮財政派筆頭である野田毅衆議院議員は、財務省肝いりの「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(5月16日)において、
 「財政破綻の足音が聞こえてきている」
 と発言。
 政府の負債が100%日本円建てであり、長期金利が0.047%の日本国において、「財政破綻の足音」が聞こえているわけだ。幻聴を聞いている、以外に表現のしようがない。

 一体、いかなる数値データに基づき「財政破綻の足音が聞こえてきている」のか、野田議員から一切の説明はない。ただ、自分の幻聴のみを根拠に、PB黒字化に固執する。
 別の言い方をすれば、「手段の目的化」である。
 特定の手段にこだわるあまり、それ自体が目的化してしまい、正しい解を導き出すことが不可能になる。一般の企業でも、よくある話ではあるが、政治の世界でこの手の誤謬がまん延すると、国民としてはたまったものではない。

 6月2日に発表された骨太の方針2017素案では、財政目標について、
 「基礎的財政収支(PB)を2020年度(平成32年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」
 と書かれている。
 繰り返すが、財政健全化の定義は、本来は「債務残高対GDP比」の引き下げだ。というわけで、ようやく骨太の方針に「本来の財政健全化」が目標として記載されることになったのだが、相変わらず「PB黒字化」も残ってしまった。

 2013年のG20サンクトペテルブルク首脳宣言において、財政目標として「政府の債務対GDP比の推移を持続可能なものにすべき」が謳われた。国際的に合意された財政健全化目標は、あくまで「政府の債務対GDP比の引き下げ」であり、PB黒字化ではない。

「世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第226回 プライマリーバランス目標と経路依存性」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る