世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第226回 プライマリーバランス目標と経路依存性 (3/3ページ)
しかも、デフレから脱却していない日本国がPBを黒字化しようとすると、
「(国債関連費以外の)歳出を拡大する際には、別の予算を削るか増税する」
という話になってしまい、「追加的な財政出動」による需要創出が不可能になる。結果的に、わが国はいつまでたってもデフレから脱却できず、2014年の消費税増税以降、予想通り再デフレ化が始まった。
骨太の方針にPB黒字化目標を残したまま、政府の負債対GDP比率引き下げを併記することは、論理的に矛盾が生じる。政府の負債対GDP比率は、PBが均衡していると仮定すると、国債金利と名目GDPの成長率で決まる。現在の日本は国債金利が超低迷しているため、「名目GDPの拡大」を実現すれば、政府の負債対GDP比率は確実に改善する。
名目GDPの成長率引き上げのためには、デフレ脱却が必須だ。というわけで、デフレ脱却を目指して政府が需要創出をしようとすると、PB黒字化目標と衝突してしまう。需要創出のために財政支出を拡大するならば、その分、他の予算を削るか増税が必要になってしまうのだ。
それにしても、ここまで執拗にPB黒字化目標が骨太の方針に残るとなると、わが国の政治家の経路依存性は重症としか表現しようがない。政府がPB黒字化という「経路」から脱しない限り、わが国のデフレ脱却はないという事実を、まずは国民がしっかりと認識する必要がある。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。