先立った夫に対する追悼も、ヴィクトリア女王のイメージ戦略のひとつだった (4/4ページ)

心に残る家族葬

そしてそれは結果的に、現代のイギリスに王室が廃絶されることなく存在し続け、国民から敬愛されていることの堅牢な基盤ともなったのである。

■ただし夫の死を政治利用したわけではない

ヴィクトリア女王は「政治利用」ではなく、心の底から夫・アルバート公を愛し、若くして喪うことになってしまった悲しみにくれたことは言うまでもない。しかし女王は、当時のイギリス国民が求めていた、夫に従順で慎しみ深い、ある意味、「強い」男性に守られなくては生きていけない「か弱い」女性ではなかった。

女王には大英帝国の君主としてのプライドや知性、豪胆さ。そしてそれらに裏づけられた、アルバート公を「追悼」するその自分を俯瞰して眺める男性的な気質や能力を有していたことで、自らの喪に服す「慎ましい」態度を国民に示すことができた。それによって、イギリスの君主制や国体そのものを揺るがすことなく、今に継承させることができたのだ。

■最期に…

我々は19世紀のイギリスにおいて、ヴィクトリア女王同様の重責や立場を担うことは決してない。しかし、自分にとって大切な人を喪う機会がある点においては、ヴィクトリア女王と同じである。そこで悲しみに乱れ、泣き叫び、まともな判断が下せなくなってしまった自分であったとしても、決して卑下することはない。

心や現実生活の「準備」をする時間がない突然のことであれば、なおさらだ。しかし、女王の強さや冷静さ、そしてしたたかさを持つことも、時と場合によっては必要だということを頭の片隅で意識するだけでも、違ってくる。何故なら、生きているありとあらゆる生き物すべての死は避けられず、絶対に訪れる、実に悲しく、やりきれないものだ。だからこそ、愛する者の死と対峙した時に「どうするか」もまた、自分自身の生き方やありようが問い直される機会でもあると言える。

■参考文献

パクス・ブリタニカの盛衰、 世界各国史11:イギリス史、 大英帝国という経験 (興亡の世界史)、 近代イギリスの歴史 16世紀から現代まで

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